機能は限定的なれど
SeaShoreは、簡単にいうと「Cocoaに移植された機能限定版GIMP」だ。保存可能なファイルフォーマットはGIMP標準のXCFとGIF/JPEG/JPEG 2000/PNG/TIFFのわずか6種類、PSDやEPSは開くことすらできない。
ツール類もGIMPに比べると貧弱だ。矩形/楕円選択ツール、ブラシや消しゴムなど基本的なものはあるものの、自動切り抜き(SIOX)や色選択といった気の利いた機能はない。レイヤーはサポートされているが、ベジェ曲線は使えない。GIMP用のプラグインが動作するわけでも、マクロにあたる”Scheme”ベースのスクリプト言語「Script-Fu」を利用した自動化がサポートされているわけでもない。とにかく機能重視であれば、やはりGIMP.appを選択したほうがいい。
GIMPになくてSeaShoreにサポートされている機能は、Mac OS Xネイティブアプリならではの「Core Image」がサポートされていることだ。[Selection]メニュー以下には、ガウシアンブラーやガラスディストーションなど十数種類のフィルターが用意されている。Core ImageはGPUを生かした高速な処理がウリであり、それらフィルターについてもダイアログ上のスライダーを動かせば、ただちに処理を画面上で確認できる。
X Window Systemに依存しないことも、もちろん大きなメリットだ。普段Aqua環境で利用しているフォントをそのまま利用できるのはもちろん、テキストボックスに直接日本語テキストを入力することが可能になる。第一、X11.appとワンセットで起動するという煩わしさがない。
SeaShoreの現実的な活用方法
前述のとおり、SeaShoreはGIMP譲りの機能とCocoaアプリとしての利便性は備えているものの、本格的なグラフィックソフトとしてバリバリ使えるかというと疑問符が付く。現バージョンは安定性に欠けるところもあり、全面的な移行はお勧めしかねるのが実情だ。
とはいえ、OS標準のビューワーソフト「Preview.app」に匹敵する起動速度を備え、Core Imagesの豊富なフィルター機能を備えていることはやはり魅力だ。スクリーンショットのプライバシーに関する部分を修正したり、グレイスケールに変換したりといった、Core Imagesのフィルターで足りてしまう処理には大変便利に使える。
以下に紹介する2つのシェルスクリプトは、いわば「SeaShoreの現実的な活用方法」だ。サービス機能に対応しないため、Automatorを利用したアプリケーション間の連携は難しいが、SeaShoreらしい画像編集には役立つと思う。なお、実行するときには「chmod +x ~
」としてファイルに実行権限を与えたうえで、/usr/local/bin
などパスの通ったディレクトリーにコピーしてほしい。
スクリーンショット作成→SeaShoreで編集
このシェルスクリプトを実行すると、[Command]+[SHIFT]+[4]キーを押したときと同様、ユーザーにキャプチャ対象のウィンドウを指定させ、それをSeaShoreで開いてくれる。画像データは標準入出力またはクリップボード経由で転送したいところだが、「pbpaste
」コマンドがPNG画像を扱えないため、一時ファイルを作成するという冴えない方法を利用している。しかし、きちんと目的は果たしてくれるはずだ。
#!/bin/sh
screencapture -i /var/tmp/captemp.png
open -a SeaShore /var/tmp/captemp.png
BMPでもPICTでもドンとこい
SeaShoreがサポートする画像フォーマットは少ないため、編集対象がそもそも限定されている。そこで、OS Xに用意されている画像ハンドリングコマンド「sips
」を使い、入力したファイルをPNGに変換することで、SeaShoreで開けるようにしている。BMPやPICT、PSDファイルも、このシェルスクリプトを使えばOKだ。
#!/bin/sh
sips -s format png $1 --out /var/tmp/out.png
open -a SeaShore /var/tmp/out.png
筆者紹介──海上忍
ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、Amazon.co.jpで見る)など。
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