日本の製品だけに絞れない!? 検索にやや難アリ
楽酷天のサイトデザインは日中両国を知る筆者から言わせれば「本家楽天に似て、それでいて中国で受け入れられるサイトデザインとも融合したサイト」だが、中国人消費者から見れば「やや落ち着いているが違和感のさほどないサイト」と認識するのではないかと思う。
実際、知り合いの中国人にサイトにアクセスしてもらったが、良くも悪くもサイトデザインでは思うところはなかったと話す。
楽酷天は楽天というブランド名を冠しているサイトなので、日本の商品が個人購入できるサイトのように思うかもしれない。楽酷天のサイトを見ていただければわかるが、メインは中国国内のショップが出店するという、中国国内で完結するオンラインショッピングサイトで、「日本商品」タブからアクセスできる日本商品の個人輸入は消極的に見える。
「日本商品」内では、楽天の海外向けサービス「楽天海外販売」に対応した製品を販売しているようで、商品数は極めて少ない。ただし商品数が少ないためか「ヤフーチャイナモール・淘日本」の機械翻訳のページと比べれば、しっかりした翻訳で商品が紹介されている。
最大の問題は日本商品のページの検索窓で検索すると、中国の商品を含む楽酷天全般の商品が検索結果として表示されること。つまり日本からの商品に絞って検索できないわけだ。
ただ、日本発の楽天なのだから、日本らしさをもっと出したらよかったのに、と思う。旗艦店を楽酷天に出店しているのはキヤノンくらいだ。ソニー・シャープ・カシオ・ユニクロ・ユニチャーム・資生堂・DHC・タイガー魔法瓶などの中国で著名な日本企業の直営旗艦店があれば、消費者の楽酷天というブランドに対しての期待に応えられるのに、と思うのは筆者だけだろうか。
楽天のノウハウを提供したサイトを開設したわけで、日本商品個人輸入サイトを開設したわけでないことはプレスリリースにも記されている。こうした海外進出は初めてではなく、中国同様日本の文化的影響が非常に強いタイでも、楽天は「タラード」というサイト開設に一役買っている。
タイについてのタラードを含むオンラインショッピング事情については、JETROの調査レポート「タイにおけるインターネット市場と日本のファッション製品伝統産品の輸出可能性に関する市場調査」が非常に詳しいので興味がある人は一読を。
楽酷天経由で日本からの個人輸入をする人はいても少数派だろう、ということで、中国の製品を楽酷天経由で購入してみることにした。
商品数はお世辞にも多いとは言えないが、「ショップの厳格な審査」「模倣品の発見と排除を徹底」「安全なインターネットショッピングを楽しめる環境を提供」というだけあり、個人経営でなく企業経営のショップばかりで、ニセモノも確かになさそうだ。
日本だとあまり実感はないが、中国だと淘宝網などでのショッピングで発生するニセモノを分別する作業がなく、現実に数ステップ省けた感はある。
だが数ステップ省けたのは、厳密な審査故にショップ数・商品数が少ないという理由もあり、淘宝網に比べれば値段が高い。筆者が楽酷天経由で購入した白物家電は500元(約6500円)程度だったが、淘宝網では複数のショップが同じ型番の製品を300元(約3900円)で売っていた。日本人でも結構な差と感じるのではないか。都市部の消費者の所得は月収2、3万円程度なのだから余計この差は顕著に感じることだろう。ちなみにこの額、リアルショップよりは安いが、リアルショップは購入者におまけをつけてくる。
中国のオンラインショッピングシーンでは、チャットソフトで店員と交渉するのが常だ。淘宝網で店員と交渉するときは専用のチャットソフト「淘宝旺旺」を利用するが、楽酷天の場合、百度のチャットソフト「百度Hi」を利用する。
新規インストールも面倒なので「Windows Live Web Messenger」のような「百度Hi」のウェブブラウザー版でチャットを利用。淘宝網は個人経営だからこそフットワークは軽く、値引き交渉にも容易に応じるが、今回の楽酷天の買い物では企業経営だからか値引き交渉には応じてくれなかった。なぜかチャット相手の店員からは「百度Hiは使いづらいから、淘宝旺旺で話そう」と持ちかけられる始末である。
淘宝網各店舗の交渉しがいのある値引きの対抗馬として楽酷天が提示しているのは楽天スーパーポイント(楽酷天超級積分)だ。日本同様ポイントくじがあり、倍付などのキャンペーンもしばしば行なっている。ただ、日本ではポイントシステムは広く認知・利用されているが、中国ではポイントシステムはデパートなど非庶民的なショップでしか実施しておらず、「ポイントが付くくらいなら、その分最初から値下げしろ。他店に行くぞ」という交渉が日常的にあり、人気のシステムとは言い難い。
楽天は「Shopping is Entertainment!」を掲げているが、ディスカウントショップのドンキホーテ的な、ないしはごちゃごちゃした市場的な買い物が好きな人は淘宝網で買い物するほうがより快感だろう。
逆にデパート的なところで買い物をするのが好きな人なら楽酷天を利用する方が楽しいかもしれない。弁明すれば、筆者は楽天を愛用している。一時期ゴールド会員となったブランクを除けば数年間プラチナ会員である。しかし圧倒的シェアの淘宝網に慣れきった身で、今現在の楽酷天はどうも好きになれない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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