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ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編- 第1回

まずはサーバーの歴史と役割から

コーヒーサーバーとメインフレームから見るサーバーの基礎

2010年11月04日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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汎用部品が使われ始めた「UNIXサーバー」

 UNIXサーバーは、おおむね、RISC(Reduced Instruction Set Computer)プロセッサーをCPUとし、OSにUNIXを採用したコンピュータである。RISCプロセッサーには、オラクル(旧サン・マイクロシステムズ)の「SPARC」、ヒューレットパッカードの「PA-RISC」、IBMの「POWER」などがあり、各社はそれぞれ、Solaris・HP-UX・AIXといった商用UNIXを組み合わせた製品を販売している。もっとも、ヒューレットパッカードは、CPUを自社開発のPA-RISCシリーズから、インテル社と共同開発したItaniumシリーズに変更している。

 UNIXサーバーは、CPU以外の部品は他ベンダーのUXIXサーバーやPCと共通の汎用部品を採用するなど廉価である。耐障害性や個々のサーバーの最大性能はメインフレームに劣るが、価格性能比では圧倒的に優れていた。そのため、信頼性が低くてもよいシステムを安く構築するのに向いている。また、複数のUNIXサーバーを組み合わせた分散処理システムを構築することで、システム全体の耐障害性や最大性能をメインフレーム並みに高めることも可能である。

 現在、分散処理システムの主流は次に説明するIAサーバーに移行したが、高性能な1台のサーバーで動かしたほうが好都合なシステム、たとえば大規模なデータベースサーバーなどで、ハイエンドなUNIXサーバーが利用されている。(写真3)

写真3 インテル Itanium プロセッサー搭載のUNIXサーバー「HP Integrity Superdome 2」

パソコンから発展した「IAサーバー」

 IA(Intel Architecture)サーバーは、IBM PC/AT互換機を元祖とするPCの機能を拡張したサーバーで、OSにはWindowsやLinuxなどを利用する。その名前は、CPUにインテル製またはその互換CPUを使用することに由来している。もともとはPCをベースに開発されたため、PCサーバーと呼ばれていた。IAサーバーは、CPUも含めて他ベンダーと共通の汎用部品を採用し、UNIXサーバーよりもさらに価格性能比が優れている。そのため、現在の分散処理システムの主流はIAサーバーである

 現在、UNIXサーバーと比べてもっとも見劣りする点はCPUの最大搭載数で、RISCプロセッサーのUNIXマシンのほうが圧倒的に多くのCPUを搭載できる。そのため、単体サーバーとしての最大処理能力はUNIXサーバーのほうが上である。とはいえ、インテルもサーバー向けCPUとしてマルチコアのプロセッサーを投入し、単体サーバーの最大処理能力を年々向上させている(写真4)。

写真4 標準的なタワー型IAサーバー「NEC Express5800/T120b-M」

 メインフレームの技術は、UNIXサーバーとIAサーバーに徐々に取り入れられている。このため、UNIXサーバーやIAサーバーの信頼性、耐障害性は年々向上し、特にハイエンドのUNIXサーバーの信頼性は、メインフレームに匹敵するレベルになった。しかし、IAサーバーの信頼性はまだまだメインフレームには及ばない。

現在のサーバーの種類

 運用管理者の立場では、すでに述べた役割(機能)別やアーキテクチャ別で見るより、処理能力や設置される場所により分類する考え方がよく用いられる。最後にこれを紹介しよう。

 まず、企業の本社やコンピュータセンターに設置され、全社レベルの業務を実行するサーバーを「エンタープライズサーバー」という。現在でも、メインフレームやハイエンドなUNIXサーバーが競争力を持っている分野である。いわゆる「会社の基幹業務」のサーバーである。

 企業内の各部門・拠点に設置され、部門レベルの業務を実行するサーバーが「部門サーバー」だ。IAサーバーが多く導入されるが、研究開発など高い処理性能が要求される部門や、大量のデータを収容するデータベースを必要とする部門では、UNIXサーバーも導入される。

 そして、部門内のユーザーグループ単位に設置され、小規模なチームの業務を実行するサーバーを「ワークグループサーバー」という。サーバーをこのレベルにまで設置するとトータルでの運用管理の手間が膨大になるため、現在では、サーバーの仮想化機能を使って、ハードウェアとしては部門サーバーに統合するケースが増えている。

 サーバーの歴史や役割、種類に関する解説は以上だ。次回は、サーバー選びで重要なスペックと機能について見てみよう。

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