7人のボカロPと担当楽曲
―― サエキさんがまだSkypeに接続されていないので、参加されたボカロPの紹介も兼ねて、ハルメンズ体験と担当曲を伺っていきましょう。
★うどんゲルゲ | 41歳。戸川純や巻上公一のような、個性的なボーカリストのモノマネをボーカロイドでやってしまう「神調教」の人。アルバムでは「焼きソバ老人」「レーダー・マン」「アンドロイドな女」「お散歩」「マスクト・パーティー」「ピンクの心」を担当。
うどんゲルゲ 僕はハルメンズより先に戸川純を知ったクチですね。中学生くらいの時にソロアルバムを買って、毎日聴いていたんですけど。ほかにアルバムは何かないかと探していたら、戸川純の名前が大きく書いてあるアルバムがあった。それが「ハルメンズ・デラックス」なんですけど。
―― 戸川純が「玉姫様」でブレークした後に出たベストアルバムですよね。
うどんゲルゲ アルバムの帯に「ハルメンズフィーチャリング戸川純」って、ハルメンズより戸川純の名前のほうが大きく書いてあって。
Image from Amazon.co.jp |
ハルメンズ/デラックス |
―― ははは。そうでしたよね。便乗商法的な。
うどんゲルゲ それで、まんまとハルメンズを聴くハメになったんですが、同じ曲を男が歌っているんで衝撃を受けたんです。それでも繰り返し聴くうちに、だんだんハルメンズのファンになっていったんですけどね。
―― 戸川純とサエキさんのバージョンが両方ある曲では、どっち側のイメージで制作されましたか?
うどんゲルゲ 今回は戸川純のモノマネにならないようにと気をつけましたね。ニコ動では気軽にモノマネやってますけどね。
―― ゲルゲさんの場合は似せようと思ったら、いくらでも似せられるんですよね。そのスキルをわざわざ封印して?
うどんゲルゲ 曲として完結するように気をつけました。
★みろんP | 年齢は内緒だがアルバム参加Pでは若いほう。ゲルニカや大貫妙子のカバーで知られるボーカロイドP。緻密なアレンジと音作りは非の打ち所なし。アルバムでは「Q-Pダンス」を担当。
みろんP 私はもともと作曲家としての上野耕路さんを尊敬してまして、最初ゲルニカから入ったクチです。ゲルニカで再演されたハルメンズの曲からの繋がりで、深く聴いてみたという感じです。
―― 「Q-Pダンス」なんかは渋い選曲だけど、よくまとまってますよね。
みろんP 本業のほうが忙しくて時間がなかったので1曲くらいしか作れそうになかったんです。それで1曲ならどれにしようかと悩んだ結果、独特のリズム感、不思議な中毒性のあるQ-Pダンスに決めました。ニコニコ動画のタグでも「謎の中毒性」という言葉をもらったんですけど、まさに自分自身でもそんな気がしていました。
★ぶっちぎりP | 年齢は内緒。平沢進やP-MODELのカバーを散々やりまくっているボーカロイドP。その方面のマニア筋からも人気が高い。「電車でGO」「昆虫軍」を担当。
ぶっちぎりP 1999年に「Drive to 2000」というイベントがありまして、裏方のお手伝いをやらせていただいたのがきっかけですね。そこでサエキさんが「電車でGO」を歌われていたんですよ。途中で総武線沿線の話をされていて、うちの実家もその辺りなんで、親近感を持ったのがきっかけですね。打ち上げで一緒にお酒を飲んだりしたんですが、たぶんサエキさんは覚えてらっしゃらないと思います。
―― ぶっちぎりPというとニューウェイブのイメージが強いですよね。
ぶっちぎりP P-MODELとか、ごく一部を偏愛している感じなんです。ハルメンズのカバーもやってはいたんですが、詳しいかというと自信がなくて。キャプミラさんに誘われて、ここのところ色々聴くようになったんですね。
★キャプテンミライ | 38歳。80年代のサブカルにどっぷり浸ったボーカロイドP。知名度は高いが、なぜか殿堂入りした曲は1つもない。「幸福の未来」「ふにゃふにゃサイボーグ」「モーター・ハミング」を担当。
キャプミラ 僕は従兄弟のお兄ちゃんに聴かされたんですが。彼は僕のオタクの先生みたいな人でしたね。いま失踪して消息不明になってしまったんですが、生きていれば46歳ですね。
―― 生きていてほしいですね、僕と同い年だし。
キャプミラ その従兄弟が家に遊びに来て、ハルメンズや戸川純をかけていったんですけど、そんな音楽今まで聴いたことがなかったので。音にユーモアがあるじゃないですか。音楽を聴き始めたきっかけが、そもそもそれですね。小学5年の頃です。
―― ルーツもルーツというとこですよね。キャプミラさんは自分の名前とリン&フューチャーナウを使い分けているけど、これは何で?
キャプミラ バンドサウンドで「ゴールデンエイジ」という曲をやりたかったんですが、フューチャーナウというバンド名なんで、「幸福の未来」という曲をやったほうが面白いかなと。
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