鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第19回
HiFiオーディオクオリティーのネットプレーヤー
ヤマハ「NP-S2000」が本格ネットオーディオ時代を切り開く!
2010年10月20日 12時00分更新
MP3などの圧縮音源があまり良くないのは狙い通り!?
一方、MP3でリッピングした楽曲を聴くと、その落差が目立つ。ボーカルの質感や音色の再現など、基本的な音の傾向が変わることはない。しかし、まずステレオセパレーションが悪くなり、ステージの奥行き感がなくなって平面的になってしまう。
ホール感のような響きの余韻も薄れがちで、演奏は演奏として聞こえるものの、その場所がホールなのか、スタジオなのか、といった実在感のようなものが失われてしまう。これについて、ヤマハの開発担当者に聞いて見ると、なんと「狙い通り」なのだと言う。
実はNP-S2000には、いわゆる圧縮音源で失われた成分を復元するなどの高音質化処理が一切行なわれていない。目指すところのテーマが「原音再生」であり、ソースのクオリティの違いがはっきりと描き分けられることもHiFiオーディオとして欠かせないポイントだというわけだ。
この違いに気付いてしまうと、これまでHDDに貯めた楽曲のすべてをリッピングし直してリニアPCMで収録したくなるはず。
反面、同社のAVアンプにもこうしたDLNAによるネットワークプレーヤー機能を持つモデル(RX-V1067 希望小売価格12万750円)があるが、こちらには、圧縮音源で感じやすい音質的な劣化を補う「ミュージックエンハンサー」機能が備わっており、MP3などの圧縮音源主体で音楽を楽しむならば、こちらの方がより好ましい音で音楽を楽しめるだろう。しかもRX-V1067なら、7チャンネルのアンプも内蔵しているなど、コストパフォーマンス面でも有利だ。
そうしたカジュアルなネットワークプレーヤー機能とは、機能的には同じでもまったく異なるスタンスにあるのがNP-S2000というわけだ。こちらの目指すものはあくまでもHiFi。高品位な音源をその良さをすべて聴き取りたいという人のためのオーディオ機器だ。
CDでは発売できないハイサンプリング録音された音源をそのまま配信できるなど、ネットワーク音楽再生の将来性に注目し、これからの新しいオーディオ機器として製品化したのだ。それだけに、第1号である本機は高音質であることを徹底して追求しているのだ。
PCで管理している圧縮音源を手軽に高音質で楽しむならば、AVアンプの備えるネットワークプレーヤー機能がおすすめ。一方で音楽CDをより良い音で、ハイサンプリング音源による高品位オーディオも本格的に楽しみたいならば、NP-S2000となる。
どちらもやっていることは同じなのだが、それぞれのスタイルは、例えば音楽CDをリッピングするときにリニアPCMを選ぶか、圧縮音源を選ぶかで明らかに異なる。
リスニングスタイルが違えば、製品のデザインも大きく変わる。この違いを意識することは、製品を選ぶときにも重要だが、ネットワーク音楽再生の魅力を誤解しないために重要だ。
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