鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第19回
HiFiオーディオクオリティーのネットプレーヤー
ヤマハ「NP-S2000」が本格ネットオーディオ時代を切り開く!
2010年10月20日 12時00分更新
同社の高級オーディオコンポと組み合わせて、その音を聴いてみる
試聴のためにお借りした機材は、NP-S2000と、プリメインアンプの「A-S2000」(希望小売価格 20万8950円)。これらはS2000シリーズとなる同社の高級コンポーネントシリーズで、かつての黄金期のオーディオ機器らしいパネルデザインやサイドウッドをあしらった意匠をモダンにリファインしたデザインで統一されている。
もちろん、その実力も徹底的にこだわっており、全段バランス伝送を採用したアンプ回路など、最新の技術を投入して音質を磨き上げたものだ。そして、スピーカーには、同じく同社の高級スピーカーシリーズ、「Soavo-1」のピアノブラックモデル(希望小売価格 21万円×2)を組み合わせている。
まず、NP-S2000の概要を見ていこう。デザイン自体はA-S2000と同様にまとめられているのだが、大きく違うのはその高さ。69mmと単品コンポーネントとしてはかなりの薄型に仕上げられている。この「薄さ」が、新しい時代のオーディオコンポーネントらしい形を主張するものとしてデザイナーがこだわったものだという。
薄型というと、手軽さや親しみやすさを感じがちだが、しかし、本機は「重い」。12kgという数値からすれば決して重すぎるわけではないが、持ってみると薄型のスリムな筐体の中に何が詰まっているのかと驚くほど重い。これは当然、頑丈なシャーシとデジタルオーディオ信号を音楽信号に変換した後のオーディオ回路の重さだ。
内部を見てみると、中身はドライブメカのないCDプレーヤーそのものと言っていい。言い換えるならば、単体D/Aコンバーターにより近いだろう。
これが実はとても重要なことで、回転体であるドライブメカは振動源でもあり、オーディオ回路に悪影響を与えやすい。本機の開発は同社のCDプレーヤーの開発を手がけた技術者が行なっているが、その開発テーマはメカレス構造によってCDプレーヤーの限界を超えること。
もちろん、CDプレーヤーからドライブメカを省いてネットワーク機能を追加しただけのものではなく、トロイダルコア+EIコアのツイントランスを採用しアナログ部とデジタル部を完全に独立した電源部は、薄い筐体でも十分な能力を持つ電源を備えるために、背が低く、しかも電源供給能力を十分に満たしたカスタム品のトランスを改めて開発するなど、大幅に見直されている。
筆者はアンプ設計などについてはまったくの素人なのだが、オーディオ機器の内部を見るのが大好きで、いわゆる左右対称レイアウトや、完全バランス伝送による回路の整然とした配置(バランス回路とは、左右それぞれのプラスとマイナスまで対象となっているため、ステレオなら同様の回路が4つ並ぶ)を見ると興奮する。
メカレスとなったことで筐体には余裕があり(横幅や奥行きはA-S2000と同一)、狭いスペースに無理矢理押し込むような回路設計ではない点も好ましい。擬人化はナンセンスと感じる人も多いだろうが、人間が、それぞれの作業ごとに部屋を分け(セパレート化)、十分な広さの空間を用意して作業させる(筐体の十分なサイズ確保)方が良い仕事ができるのは、オーディオ機器も同じだ。
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