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山谷剛史の「中国IT小話」 第82回

近未来のネット人口50億人時代を中国から考える

2010年10月18日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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山寨機の存在が世界のネット接続環境を変える!?

タイの携帯電話市場で中国の山寨機の存在感が増している

タイの携帯電話市場で中国の山寨機の存在感が増している

 中国発の激安人件費にものをいわせた激安ノンブランドケータイこと「山寨機」(関連記事)の登場で、中国でも農村部で携帯電話が一気に普及し、またアジアや中東など中国国外でも受け入れられつつある。

ウズベキスタンの山寨機携帯ショップ

ウズベキスタンの山寨機携帯ショップ

ベトナムのケータイショップ。10年内にスマートフォンが当たり前に売られるようになるのだろうか

ベトナムのケータイショップ。10年内にスマートフォンが当たり前に売られるようになるのだろうか

 山寨機というとiPhoneもどきを思い浮かぶ人もいるだろうが、そのようなパチモノではなく、電話やメールが「とりあえず使える」激安機として、特に所得の低い地域で受け入れられている。

 山寨機は部品を集めて電子工作するだけの製品だ。過去には激安なチップをリリースしていた台湾MediaTek(聯発科技)社が、新製品のチップをリリースすると、それを搭載した山寨機が登場する。

 ウェブブラウザーを搭載するスマートフォンなど、新しい機能が搭載された山寨機の登場は、新型チップのリリースを待つことになる。近年は中国の有象無象の工場が、AndroidタブレットやネットブックやノートPCを作り始めている。

 人民元の大幅な切り上げがあろうが、人件費が上がろうが、ルールを無視しても安価なモノ作りを行なおうとする人々は中国人くらいなので、聯発科技と無数の中国の中小工場のタッグが、新興国や途上国の人々にネットデバイスを提供し、世界のネット人口50億人への貢献をするのではないだろうか。

PCを利用した簡易ビジネスセンターは今後増えるだろう(写真はキルギス)

PCを利用した簡易ビジネスセンターは今後増えるだろう(写真はキルギス)

 もちろんハードウェアが安いだけではネットは普及しない。各地域の人々がネットを利用したくなる動機が必要だ。筆者自身、最近東南アジアやロシア文化圏行ったときに感じたのは、オンラインゲームとチャットやメールなどのコミュニケーションソフト目的でネットを利用する若者はすごく多いということ。

 ビジネス目的でネットを使う人もいるが、母国語の資料だけで調べ事が済むローカル言語は日本語を含め少数派で、ウェブサーフィンをしていると英語のサイトを頻繁に読まなくてはならなくないのが多数派だ。途上国で英語が読める人はどれくらいいるかを考えるに、やはりネットの用途はビジネス用途で使う人よりも娯楽用途で使う人の方が多いのではないか。

 実際、JETROの海外コンテンツレポートを見る限り、各国のネットカフェではどこでもオンラインゲームや音楽のダウンロードが人気のようである。

 東南アジアのレポートによれば、2000年にシンガポールでブロードバンドインフラが整備され、その後タイ、ベトナムが続き、通信環境が整備された順にオンラインゲーム市場が形成されている。

ウズベキスタンのインターネットカフェ

ウズベキスタンのインターネットカフェ

 各国とも回線速度の速いネットカフェを拠点にユーザーが集まり、次第にユーザー層が増大。ネットカフェに通っていたユーザーの自宅にPCとADSLが備わると、自宅でゲームをプレイするようになるという。これは中国におけるネット普及と同じプロセスだ。

BSAによる世界のビジネスソフト海賊版利用率

BSAによる世界のビジネスソフト海賊版利用率

 BSA(ビジネスソフトウェアアライアンス)のレポートを見ると、総じて途上国や新興国で海賊版使用率が高く、同じくネットで海賊版コンテンツが流通している中国に通じるところがある。だがその中国もコンテンツホルダーによる無許可の配信者への法的措置が講じられるようになり、広告収入により無料化された正規版コンテンツが流通しはじめた。つまりこれからネットが普及する途上国や新興国は中国と似たような道を通りネットビジネスが成長するのでは、と思うのだ。

日本コンテンツは東アジア・東南アジア以外では、欧米コンテンツのほうが勢力が強い

日本コンテンツは東アジア・東南アジア以外では、欧米コンテンツのほうが勢力が強い

 JETROの海外コンテンツレポートによれば、東南アジアだろうと、中東のドバイやエジプトだろうと、東欧のルーマニアだろうと日本のアニメは多かれ少なかれ浸透しているという。

 ネット利用者50億人時代に向けて、日本の武器のひとつであるアニメをはじめとしたコンテンツを売っていくべく、インターネットが新興国や途上国で普及し続けているか、JETROや各メディアの調査統計に注意を払っておくべきだろう。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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