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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第7回

変化はメインストリームではないところからやってくる

直球で「愛」とは言わない! 背中で語るアニメの美学 【後編】

2010年10月30日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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これからもストレートは狙わずに

―― 私は個人的に、アニメのわかりやすさや、感動的に盛り上がるところが好きなんですけれども、「ナイトレイド」の持つ、温度の低さにも引かれたんですね。好きな理由が何となく分かった気がします。底に流れる叙情はありつつ、ストレートに表現しない、という。

大西 私は、ただ習ってきた脚本の書き方とか、実写でやってきた経験から、そういうセオリーでやっているだけなので、何が正しいとは言えないと思うんですけれどもね。何が正しいのかは、それこそ視聴者の方、お客さんの支持によって変わってくるものですから。

 お客さんが喜ぶなら、ストレートのほうが正しいということになるわけで。正しくなるという言い方は変なんですけれども、そういうものなのかもしれないとは思います。


―― でもこれからも熱血で直球な話は、大西さんはおそらく書かれないのでは。

大西 そうですね。どのお客さんに向けるかというのもあると思うんです。私がアニメーションの世界に呼んでもらってこうして書いていて思うのは、アニメのお客さんが喜んで下さることって、予想以上に幅が広いんだなということなんです。

 アニメーションは、岡村天斎監督の「人造人間キカイダー THE ANIMATION」が初めてだったんですけど、「キカイダー」をやり始めてから、もう一度アニメを見始めたんです。僕のアニメ体験は「宇宙戦艦ヤマト」ぐらいで一旦終わってしまっていたもので。そのとき、「機動戦士ガンダム」や「新世紀エヴァンゲリオン」、他にもいろんな作品を見てすごく驚いたんです。アニメというものの多様性に。「今のアニメって、こんなこともやるんだ」みたいな。

 岡村監督が作った「キカイダー」も、すごく地味な、暗い話なんですよ(笑)。それがわりと私の色と合っていたのかもしれない。こういう地味めで暗い話でもオーケーなら、私でも書けるかなと思って。「ナイトレイド」も同様で、脚本の温度の低さが新鮮に映って楽しんでくれる人が少しはいると思うので、その人のためにあるのかなという。

 今なら「泣ける映画」とかダイレクトなものが受けるという時代の風潮とか流れはあると思います。けれども、そういう時代にも、ストレートじゃなくて、変化球を投げる人間がいてもいいのかなと。「変化球」を投げ続けていくことで、毎回、何かしらの変化が生じてくれたらうれしいなと思います。作品にも、僕自身にも。


■著者経歴――渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)

 1967年、愛知県生まれ。椙山女学園大学を卒業後、映画会社勤務を経てフリーライターに。アニメをフィールドにするカルチャー系ライターで、作品と受け手の関係に焦点を当てた記事を書く。日経ビジネスオンラインにて「アニメから見る時代の欲望」連載。著書に「ワタシの夫は理系クン」(NTT出版)ほか。

DVD発売情報

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