レノボ・ジャパンは13日、液晶一体型デスクトップPCの新製品「IdeaCentre A700」を発表した。価格はオープンプライスで、店頭での価格は14万円前後になる見込み。11月の発売を予定している。
同社の液晶一体型PCとしては、上位に位置付けられる製品。ディスプレーサイズは23型ワイドで、フルHDパネル(1920×1080ドット)となっている。
タッチパネルによって、Windows 7のマルチタッチ機能が効果的に活用できる点も特徴だ。地上デジタル/BSデジタル/110度CS対応の3波チューナーを搭載しており、Windows Media Centerを活用したテレビ録画やDVDへの書き出しが可能である。
本体には無線LAN機能とBluetoothを標準装備しているため、キーボード・マウス・インターネット接続を無線化し、電源ケーブル1本で設置ができる(電源は外付けのACアダプターを使用)。
HDMI端子は入力×1系統だけでなく、出力×1系統も装備する。ゲーム機やBlu-ray Discプレーヤーのディスプレーとして使用したり、薄型テレビやプロジェクターなどとの接続も可能だ。
本体はディスプレー部71mm(スタンド部は最大270mm)と薄型。金属製パーツの採用など、デザイン性にも配慮している。
低価格化が進む液晶一体型デスクトップだが、日本HPやデルなど競合社と比較しても高い価格競争力を持ち、テレビ機能搭載パソコンとして十分なスペックを実現しているように感じる。ここでは米国モーリスビルから来日したケビン・W・べック氏に、IdeaCentre A700を始めとした同社液晶一体型パソコンの魅力について聞いた。
世界でも広く支持され、急速な低価格化が進む液晶一体型PC
べック氏は、米国のLenovo Innovation Centerにおいて、レノボ製品の普及活動、他社製品との比較考察、ワールドワイド・エグゼクティブ・ブリーフィングセンター・プログラムの技術監修などを務めている人物。
IBM時代には東京で、アジア太平洋地域向けのデスクトップ・マーケティング・マネージャーを担当したこともあり、日本語も堪能だ。
レノボの液晶一体型デスクトップには現在、「Aライン」「Bライン」「Cライン」の3種類があるが、AラインはインテルのCore iシリーズ搭載のハイエンド機、Bラインはコスト性能に優れたAthlon II搭載のハイコストパフォーマンス機、そしてCラインはAtomプロセッサーを搭載した超低価格の個性派モデルという位置付けとなっている。
液晶一体型パソコンは、省スペースでデザイン性にも優れるという理由から、国内では昔から人気のあるカテゴリーである。しかし、「寮生活などで居住空間が限られる学生などが、1台でテレビとパソコンの両方の機能を得られるという点が受け、北米市場でも人気が出ている」(べック氏)のだという。また、最近では液晶パネルの低廉化という背景もあり、システムトータルでのコストも低く抑えられるようになっている。
べック氏はIBM時代(2000年ごろ)に、企業向け液晶一体型PCの「NetVista X40」シリーズを手掛けたことがある。
しかし、当時の液晶ディスプレーは「まだまだ高価であり、耐用年数が2~3年の本体より何年か長く使うのが一般的だった。そのため、一体型PCはコスト的に割高感があり、プレミアムな付加価値を持つ製品としてみなされていた」と話す。現在では「それぞれを別個に用意するよりも低価格なシステムの構築が可能であり、それが海外市場で受け入れられる要因のひとつになっている」と分析する。
実際、23インチクラスの大画面を備え、モバイル向けのCore i5-460M、4GBメモリー、1TB HDD(7200回転)を備えた機種で14万円以下の価格と言うのは破格に感じる。
操作感や音にもこだわり
IdeaCentre A700は、十分な基本性能を確保しつつ、シンプルな構成を狙った製品と言える。付属ソフトの類も最小限に抑えられているが、ユーザビリティーに対しては妥協せず取り組んでいると感じた。
例えばタッチパネルに関しては、大画面と言うこともあり静電容量式や抵抗膜方式ではコスト的に難しい。他社では光学式のセンサーを利用するケースがあるが、この製品ではより高い精度の得られる方式を採用したと言う。ガラス表面の振動を超音波で検知するというものだ。バックライトも高輝度で低消費電力のLEDを利用している。
また、利用頻度の高い操作を指先で実現するために専用のアプリケーションを開発している。暗い部屋でも使いやすいキーボードライト、環境光に応じてディスプレーの輝度が変わる「Dynamic Brightness」、適切な距離でディスプレーを眺めていないと、目を傷めると警告が出る「Eye Distance System」といった機能も装備している。
特に写真・動画・音楽再生が可能な「PowerCinema」には注目。ミニゲームなどを簡単に呼び出したり、ジェスチャー操作で本体のログオフや再起動ができるUIなども用意している。サードパーティやマイクロソフトの技術を応用しながら、基本的な操作はキーボード/マウスレスでこなせるようにした。
また、音にこだわったシステムでもある点にも注目したい。
JBLスピーカーにDolby Home Theaterを組み合わせることで、パソコンでありながら広い音場感と情報量の多い再生が可能となっている。音に関しては主観的な要素があるため、実機を体験してもらうのが一番だと思うが、その音質の高さには多くの人が驚くのではないだろうか。
販路の拡充を望む
取材ではすでに発表済みの「IdeaCentre B305」とともに「IdeaCentre A700」に触れることができた。
IdeaCentre B305はAMDプラットフォームを採用することで、さらに低価格となっている。テレビ録画機能なしのモデルで6万円程度、録画機能ありのモデルでも8万円程度の実売価格で販売されている。
タッチパネルやHDMI端子は搭載せず、録画したデータをDVDなどに焼くことはできない(A700はWindows Media Centreの機能を利用し、DVDへのダビングが可能)といった特徴があるが、20型ワイド液晶ディスプレー搭載の製品としては非常に戦略的な価格設定と言えそうだ。
IdeaCentre A700/B305ともOffice 2010 Home & Business搭載モデルが用意されており、価格はプラス2万円となる(この記事で紹介しているIdeaCentre A700にはOffice 2010がプリインストールされている)。
欲を言えば、Blu-ray Discドライブを搭載した上位機種(現在スロットインタイプの薄型ドライブがなく搭載を断念したという)や、壁面やアームへの取り付けが可能なVESAマウントへの対応なども望みたいところだが、質感の高い筺体と十分なスペックを備えたマシンがこの価格で手に入るのであれば不満はないだろう。
当面直販/CTOなどはせず、量販店での1モデル展開になるとのこと。実機に触れることができる店舗の拡充にもぜひ期待したいところだ。