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ネットに生きる現代の匠“CTO・エンジニア”に聞く 第3回

編集者から華麗なる転身

2000年に慶應版「Facebook」立ち上げた文系女子

2010年11月03日 09時00分更新

文● 古田雄介

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マスメディアの視点を持つエンジニアに進化

── 「ITを仕事にしたい」と思ったのはいつ頃ですか? 大学卒業後は一旦別の道、出版社に就職されていますね。

新卒でウェブサービスの世界に進まなかったのは、途中で飽きちゃうんじゃないかと思ったから

閑歳  エンジニアでという意味では、27歳くらいのときですね。そのままウェブサービスの世界に進まなかったのは、途中で飽きちゃうんじゃないかと思ったからです。

 当時は自分がそれほどインターネットを好きだと自覚していなかったんです。それなら、飽きるより毎日変化を追い続けていけるマスメディアに携わろうと考えました。

 日経BP社では最初に通信系の専門雑誌の記者として働いていましたが、仕事としてやっぱり楽しかったです。ただ、インターネットについて外部から触れていくうちに、「私ってかなりインターネットが好きなんじゃないか」と思えるようになってきたんです。

── 外から見ることで自分を相対的に見つめられたと。

閑歳  そうですね。考えてみると学生時代も、インターネットが好きだと言ってもネットワーク系の関心が主だったりして、サービスをどう展開するかというところに興味を持つ人がそんなに周りにはいなかったのかもしれません。

 社会に出たあとで、「私はウェブサービスを作りたい」という気持ちを自覚したと思います。そういうときに、渡りに船でITベンチャーでCTOをやっている学生時代の同級生から誘ってもらったんです。

── では、ITベンチャーに転職してから、エンジニアとしてのキャリアを積んでいったわけですか?

閑歳  いえ、まだです。転職は出版社で3年半経った頃でしたが、ずっとHTMLにも触れていない生活だったので、エンジニアとしての仕事は何もできなかったんです。それで、学生時代のようにサービスを企画するディレクターのような感じて働かせてもらいました。

 ただ、ここで色々な作業の流れを把握できたのは大きかったです。たとえば、サービス用のサーバーを用意する際、データセンターを借りてイチから組んだり、プログラムの修正や改良の過程に立ち会ったりと、かなり貴重な経験をさせてもらえたと思います。

 そうやって多くの機会で技術者の皆さんに色々教えてもらって、一応イチからプログラミングできるようになったのがその会社を離れる27歳の頃なんです。

── ストレートにプログラム畑を歩かずに、色々な立場で通信やウェブサービスに携わられたんですね。

閑歳  計画的にそうしたわけではないんですが、その経験が現在もけっこう強みになっていますね。特にマスメディアの視点を持ったうえで、サービスを開発できるという人はあまりいないと思うので、自分でもラッキーだと思います。

── 具体的にはどんなところに強みを感じますか?

閑歳  発想と見せ方です。新しいサービスを考えるときでも、幅広い利用者の反応が想像できたりしますから。見せ方については、たとえば、どんな見せ方をすればニュースになりやすいかといった感覚はすごく養われたと思います。

 せっかくすごく画期的なサービスを開発しても、一般的にはどう便利なのか分かりにくくて一部の人にしか使ってもらえないというのは、すごくもったいないと思うんです。

 たとえば、サービスの画面にちょっとしたデザインを入れるだけでも、興味を持ってくれる人の数はすごく変わります。そういう視点からものづくりできるところが自分の強みだと思います。

── なるほど。では、現在のユーザーローカルに就職したいきさつを教えてください。

閑歳  学生時代に作った「SFC★MODE」の成功体験が根底にあります。当時はキャンパス内の95%の人が使ってくれていて、自分のまったく知らない人に「超助かった」と喜んでもらえたり。それがすごく嬉しかったのを覚えています。

 ある程度技術が使えるようになっていたこともあって、そういう利用者の声がダイレクトに届くようなサービスを作りたくなったんです。

 前の会社はどちらかというとBtoB、企業からの受託開発がメインだったので、思い切って飛び出しました。

 それで、ディレクターとエンジニアと両方ができるような会社を探す期間がしばらくあり、友人のつてでユーザーローカルの伊藤社長に紹介してもらって、現在に至るという流れです。

エンジニアとして活動するようになってからは、Twitterでリツイートされた発言ののべ読者数を表示するサービス「ReTweeter!」や、写真のスライドショーサービス「Smillie!」(画像)など、個人でも積極的にウェブサービスを開発している

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