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Windows Serverで学ぶサーバOS入門 最終回

Hyper-Vの便利な機能とは?

スナップショットとクイックマイグレーションを使ってみよう

2010年10月19日 09時00分更新

文● 横山哲也/グローバルナレッジネットワーク株式会社

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仮想サーバを保存する

 Hyper-Vには、仮想サーバの状態を完全に保存し、動作を停止させる機能がある。これを「保存」または「状態の保存」と呼ぶ。保存機能は、ノートPCの休止状態とよく似たイメージだ。既定では、物理サーバのシャットダウン時は仮想サーバの状態が自動的に保存される。明示的に保存を行なうには、Hyper-Vマネージャで仮想サーバを右クリックし「保存」を選択する(画面4)。Hyper-V接続クライアント(vmconnect)の「操作」メニューから「保存」を選んでもよい。

画面4●仮想マシンの状態を保存する

 保存状態から再開するための特別な操作はない。仮想サーバが起動する際に、保存された状態があれば自動的に状態を復元する。なんらかの事情で保存状態が復元できない場合は、保存状態を削除して再起動することもできる。また、物理サーバが再起動したら、自動的に保存状態を復元することも可能だ。

クイックマイグレーション

 仮想サーバの保存機能を応用したのが、クイックマイグレーションである。クイックマイグレーションは、Windows Server 2008のフェイルオーバクラスタ上で動作するHyper-Vで利用できる。フェイルオーバクラスタはWindows Server 2008 EnterpriseとDatacenterで利用できる。

 フェイルオーバクラスタは、2台以上16台以下の物理サーバで構成される。各サーバを「ノード」と呼び、それぞれに独立したOSをインストールする。何らかの障害が発生し、クラスタ上で動作するサービスが停止した場合、停止したサービスの実行をほかのノードへ移動する(引き継いで実行する)ことで、停止時間を最小限に抑える。フェイルオーバクラスタにはさまざまな構成パターンが利用できるが、クイックマイグレーションで使用するのは、共有ディスク型のクラスタだ。

フェイルオーバクラスタの設定

 クイックマイグレーションを構成するには、仮想サーバの構成ファイルと仮想ハードディスクをクラスタ共有ディスクに配置し、クラスタ管理ツールに登録すればよい。クラスタ環境さえ構築されていれば、クイックマイグレーションの構成は数分以内で完了する。

 フェイルオーバクラスタの原理は以下の通りである(図2)。

図2●クイックマイグレーション

  1. 仮想サーバを実行しているノードAに障害発生
  2. ノードAで仮想サーバの状態を保存する
  3. クラスタ共有ディスクの所有権がノードBに移行
  4. ノードBで仮想サーバが起動
  5. ノードBで仮想サーバの状態を復元する

 処理に時間のかかるファイル複製が不要なため、クイックマイグレーションに必要な時間は、状態の保存と復元にかかる時間にほぼ等しい。通常は数十秒以内である。ただし、障害がSTOPエラー(いわゆるブルースクリーン)のような致命的なものの場合、状態を保存する猶予がない。この場合でも、仮想サーバの移行は行なわれるが、いきなり電源を切ったのと同じ状態で再起動する。クイックマイグレーションは、物理サーバの計画停止や軽微な障害には効果的だが、あらゆる障害を回避できるわけではない。

 また、クイックマイグレーション中は仮想サーバが一時的に停止してネットワークも切断される。Windows Server 2008 R2ではこれが改善され、停止時間を事実上ゼロにできる予定である。これを「ライブマイグレーション」と呼ぶ。

(次ページ、「エクスポートとインポート」に続く)


 

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