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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

ネット行動とコンテンツ消費で客を掴め!

2010年10月04日 06時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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おひとりさまは
かなりのアナログ!?

 さっそく、おひとりさまのデータを見ていくと、「コミュニケーションスタイル」に大きな特徴がある。これは、アスキー総研独自の指標で、集計データをもとに、そのメディアやコンテンツの利用頻度などが「平均以上なのか、以下なのか」が分かるものだ。なんといっても、おひとりさまで際だっているのは「劇場・ライブ・ショーに年4回以上行く」という人が21.3%と、全体平均の2倍以上もいることだ。いわゆる「フェス女」と呼ばれる層が、ここに含まれている(なお、PC版の「MCS 2010」では、実際に出かけているイベントまで抽出可能)。

 ところで、意外に思えるのが「PCでSNS、Twitter等を1日に30分以上利用」している人の割合は、15.8%とそれほど高くないことだ。そこで、トップページの「SEARCH MORE」から、30代全体のSNS、Twitterなどの利用率を見てみた。

 上の画面は30~34歳で、「PCでSNS、Twitter等を1日に30分以上利用」している人は19.8%。35~39歳でも16.7%となるので、おひとりさまではない30代女性全体のSNS、Twitter利用率は20%弱となると思われる。それに比べると、おひとりさまのソーシャル度は低い。ちなみに、mixiの利用も27.6%と平均以上だが、やはり30代全体よりは低くなる。

 30代女性といえば、ここ数年ゲーム業界を支えてきたカジュアルゲーム(脳トレやWii Fit、トモダチコレクションなど)の中心ユーザーかとも予想できる。ところが、携帯型ゲーム機向けゲームを年に3本以上購入する人は5.5%と、一定数はいるものの、ほかの30代女性に比べるとこれも少ない。mixiアプリなどのPC無料ゲームソフトを1日に10分以上プレイする人も、7.9%と全体よりかなり少ない。

 実は、おひとりさまは“アナログ”傾向が強いようである。

 そこで、おひとりさまが読んでいる雑誌を見てみると、次のようになった。なんといっても『an・an』がダントツというのが目立つ。

 『an・an』は、おひとりさま雑誌なのか? ここで画面左の「an・an(女性誌)」と書かれた部分をタッチしてみると、「an・an(女性誌)この内容で分析」というポップアップが表示されるので、それをタッチする。すると『an・an』読者のデータ分析に飛べるようになっている。

 ここから「ライフステージ」を選ぶと、たしかに「女性・独身・デートなし」が43%も占めている。ところが、読者の年齢層を見ると『an・an』の読者構成は以下のようになっている。つまり、20代後半の女性が中心読者なのだ。

 それでは、「おひとりさま」でなにが起きているのか? 30~34歳の購読雑誌を見ると、以下のように『MORE』が断然トップとなる。全体に対する伸び率も高い。

 また、35~39歳女性の購読雑誌というと次のようになる。『オレンジページ』がダントツ。以下、フリーペーパーと順当な女性誌が並ぶ。

 『an・an』や『少年ジャンプ』(!)などの読まれ方を見ると、おひとりさまの雑誌購読傾向は“若め”なのだ。まさに、「30歳すぎで独身を楽しんでいる」というとおりで、大変に結構なことでしょう。

 しかし、一方では「おひとりさまってBL(=ボーイズライブ)好きなんじゃないの?」という意見が、世の中にはあってもおかしくないと思う。そこで、おひとりさまの「本・記事の興味テーマ」を見ると以下のようになる。

 10.5%もの人が、「マンガ - ボーイズラブ、ガールズラブ」を読みたいジャンルと答えている。しかし、これも検証が必要だ。30~34歳女性では8.5%、35~39歳女性では7.1%にもなっている。30代女性には潜在的にBL(ボーイズラブ)の要素があるといったほうが正しい(ボーイズラブ、ガールズラブを一緒に扱うのは少々乱暴というものだが、より詳細に分析したいときは、具体的な消費コンテンツを見ることができる)。おひとりさまはBL指向はあるものの、必ずしも際だって高いというのではない。

 それよりも、わたしが注目したのは、彼女らの「萌え」に対する興味の高さだ。萌えが興味テーマと答えた人は、30~34歳女性では0.7%、35~39歳女性では2.3%。それに対して、おひとりさまの3.9%が「萌え」が興味分野と答えている。実は、これは、30代男性よりも高い支持率なのだ(30~34歳男子が4.5%、35~39歳男性が2.9%)。

 おひとりさまは“萌えている”。

 問題は、何に萌えているか。MCSでは、具体的に視聴しているコンテンツについても見ていけるのだが、今回はここまでにさせてもらう。

 「おひとりさま」を例にとったのは、その人口が推定でも500万人近くと、かなりの数にのぼるというのが理由のひとつ。しかも、広告の世界でいえばF1(20~34歳)の終わりから、F2(35~49歳)の始めにあたり、日本の消費を支える重要な層だからである。

 もっとも、ここでは「MCS」のiPad版を使って、おひとりさまの全体像のごく一部に触れてみただけだ(30~34歳、35~39歳の女性全体と比べてみたりしているが、厳密に生年月日から同じ年齢層というわけでもない)。実際には、最後の一人一人まで多様性があって、このような分析は、彼女らにリーチするための指標を探す手がかりに過ぎない。

 ネットサービスやゲームソフトなどの利用比率が、同じ30代女性よりも低くなるのは、「彼氏がいないからデジタルの普及が遅れているのだよ」という意見もあった。しかし、むしろ彼女らはより自由な時間を持っていて、デジタルに頼ることなく、リアルな世界を堪能しているのだとも思える。

  • おひとりさまは“若め”(購読雑誌など)
  • おひとりさまは“アナログ”っぽい
  • おひとりさまは“BL”率がことさら高いわけではない
  • おひとりさまは“萌えている”

 もっとも、これだけのデータで見えるてくるのも、まだ「仮説」だといったほうが正しい。詳細な分析を加えることで違った視点が見えてくる可能性もある。「MCS Elements」で、いまどきの日本人のライフスタイルを縦横にさぐってみてほしい。


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