「アンフレンドリー」な世界観が目指すもの
―― 最初の会社説明会以降、「ユーザーアンフレンドリー」と盛んにおっしゃっているわけですが、それって売り文句としてどうなんだと思うんですけど。
岡宮 僕も(会社説明会の)壇上で、佐野がその言葉を口走ったときに、冷汗かきましたけど。
―― あの時が初出なんですか?
佐野 ぱっと思いついてですね。
岡宮 コルグさんの手前、僕はドキッっとしたんですけど。
―― コルグ側はどうなんですか。使いにくいもの作ってるつもりはないぞコラ、とか。
佐藤 いや、僕はむしろ、ああいう言葉は逆に取られるので、喜ばしいと思って聞いていましたけど。
岡宮 ゲーム業界でもあるんですが、「ユーザーフレンドリー」を誤解して、見た目だけ分かりやすくするしようとすることがあったりするんですよ。実際にさわったときに操作しやすいかどうかが重要で、世界観を壊してまで分かりやすくする必要はないという意味では、いい言葉かも知れませんね。
佐野 80年代後半の世界観なんですよ。当時としてはM1の操作系は満点だったと思うわけです。2段のテキストのディスプレイで多機能化させるという方向は。でも今のレベルで見ると使いにくいわけですよね。
―― ただメタファーとして、見た目に分かりにくいですよね。DS-10のパッチケーブルと違って。
佐野 まあアンフレンドリーなのは、ファンクションキーの機能表示が上の液晶に出るという、その部分だけなんですけどね。それを「ファンクションキーワールド!」って言うよりね、そこにビールの力もあって「ユーザーアンフレンドリー!」って言葉が出ちゃったんですけど。※
岡宮 だいたいがビールの力なんですよね……。
※ 株式会社DETUNE会社説明会の会場となった新宿ロフトプラスワンでは、お客さん同様、出演者もお酒を飲めてしまう。
―― まあ実際使った人は「使いやすい」と言ってますしね。
佐藤 DS-10と比較してということだと思うんですが、16ステップシーケンサーから本格的なピアノロールになりましたからね。
井上 当たり前にできて欲しいことがちゃんとできる、ということですよね。
佐藤 DAW的な世界がDSの中に展開されているのは、僕らから見ても大変な驚きですね。
―― DS-10もそうでしたが、MIDIデータの入出力や、PCとのデータのやりとりができません。DAWと連携できたら最高だと思うんですが。
佐野 そういう要望は今回も聞いているんですが、もしそれができていたとしたら、DS-10はあそこまで盛り上がっていなかったと思うんですよね。それはDS-10の時に感じた長所なんです。だからそれはM01でも踏襲しようと。
井上 MIDIを受けたり出せたりしたら、その方がいいのかも知れないけど、がんばって載せなきゃならない程のものでもないと思いますね。
岡宮 それをやろうとするなら、DSじゃなくてもいいじゃない、ってことになりかねない。僕らの目指すべき方向は、ツール同士がデータでつながることじゃないんです。
(記事後編は、M1との相関や音色について聞く!)
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。