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いよいよ始まる日本のIaaS-2010年版- 第2回

アマゾンが提供する「元祖」パブリッククラウド

進化を続けるAmazon Web Services

2010年09月30日 06時00分更新

文● クラウド研究会 浦本 直彦

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オンラインストレージサービス

 AWSで提供されるオンラインストレージには、Amazon EC2と並ぶ代表的なサービスである「Amazon S3」と、前出のAMI 環境でネットワークドライブ的な使い方をする「Amazon EBS」の2つのタイプがある。

Amazon S3

 Amazon S3(Simple Storage Service)は、スケーラブルで信頼性が高く、かつ高速なストレージ環境を低価格で提供するAWSのサービスだ。その特徴として、以下のポイントが挙げられる。

 まず1バイト~5GB単位のデータオブジェクトに対するリード/ライト/削除を行なう。保存できるデータオブジェクト数の上限はない。2010年2月からは、すべての操作の履歴を保存することが可能となった。

 各オブジェクトは、開発者が指定した一意の識別子を持つ「バケット(bucket)」と呼ばれるコンテナに保管される。この識別子は、グローバルに一意である必要があるバケットの物理的な保管場所として、1.米国スタンダード(米国内のデータセンター「Northern Virginia」あるいは「Pacific Northwest」に自動的に配置)、2.ヨーロッパ(アイルランド)、3.米国西地域(Northern California)を選択できる。

 ネットワークレイテンシを考慮したい場合や、各国の法律遵守のために物理的な保存場所を指定したいときなどに便利であるデータの移動を、後述する「リージョン」と呼ばれる管理単位に制限することが可能だ。

 たとえば、ヨーロッパではプライベート情報を含むデータを、ヨーロッパ域外で処理することを制限している。この機能は、ヨーロッパ内にデータが保存されることを保証するために有用な機能であるRESTまたは、SOAP形式による標準化されたアクセスができるデータアクセス時の認証の仕組みが提供されており、データの公開・非公開を制御することが可能。特定のユーザーだけにアクセスを許すこともできる。デフォルトの転送プロトコルはHTTPであるが、BitTorrentなど、そのほかのプロトコルを用いることも可能となっている。

 さらにSLAに基づき、高信頼な環境が提供されている。

 価格は、ストレージ本体、データ転送量、アクセス要求の回数に対して設定される。ただし、物理的なリソースが米国とヨーロッパのどちらに置かれるかで、多少異なってくる。また、データ転送料金をアクセスする側が負担する仕組みである「Requester Pays」も提供されている。

 Amazon S3上のリソースの操作は、RESTあるいはSOAPプロトコルを用いて行なう。メッセージの発行者の認証には、AWSに登録する際に付与されるAccessKeyIdとバケット名、タイムスタンプ、コンテンツ内容などの情報に対する署名(Signature)値の組み合わせが用いられる。また、RESTおよびSOAPについてはAPIが公開されており、Amazon S3を仮想的なファイルシステムとして使うばかりでなく、Webアプリケーションの一部として組み込めるようになっている。一例として、Amazon S3サービスの対話的なツールを画面に示す。

Amazon S3のGUIツール「Firefox S3Fox Organizer」

 現在Amazon S3は、多くの企業内システムや商用サービスにおいても使用されている。ユーザーにとっては、自前のストレージ環境(データセンター)を構築するのに比べ、メンテナンスや事業規模に応じた柔軟な構成の変化という面でのコストメリットがある。また、Amazon EC2と組み合わせて、より低コストでWebアプリケーションを構築するという利点も得られる。

 さらにAmazon S3では、スケーラブルに大規模データを保存し、そのデータを操作するためのAPIを提供している。しかし、大規模なデータをインターネット経由でインポートしたり、エクスポートするには時間とコストがかかる。この点が、Amazon S3を利用するうえでのネックとなっていた。

 アマゾンはこの問題への対応策として、「AWS Import/Export」というサービスを提供している。AWS Importは、米国内のユーザーがHDDを物理的にアマゾンに郵送し、データをロードしてもらうというサービスだ(Exportはその逆)。このサービスは現在、SATA/eSATAまたはUSB2.0インターフェイスで、NTFS/ext2/ext3/FAT32の各フォーマットによる4TBまでのストレージデバイスを対象としている。

Amazon EBS

 Amazon S3ストレージがAPI経由でアクセスされるのに対し、Amazon EBS(Elastic Block Store)で提供されるストレージは、Amazon EC2(AMI)インスタンスからマウントされた、巨大なディスクとして用いられる。1つのブロックボリュームを1GBから1TBの間で定義し、そのボリューム上にファイルシステムを構築する。

 Amazon EBSストレージは、Amazon EC2インスタンスのライフサイクルと独立した形で生成して利用できる。そのため、Amazon EC2インスタンスがダウンした際にも、データをアクティブに保てるという利点がある。また、Amazon EBSからAmazon EC2インスタンスをブートすることも可能になっている。加えて、スナップショットをAmazon S3へ保存する機能も備える。

(次ページ、2タイプのデータベース)


 

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