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イグノーベル賞受賞者が語る、エクストリーム実験の面白み

2010年09月26日 18時00分更新

文● 秋山 文野

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ビジュアル重視の本は、今のところKindle向きではない?

――「元素図鑑」はiPad向けの電子書籍として大変人気ですが、「Mad Science」電子書籍版のご予定は?

「いたずらスプーン(Gag with a Spoon)」を実演して見せるGray氏。ビスマス、インジウム、錫の合金で作ったティースプーンは、湯に浸しただけで簡単に溶けてしまう。水の温度が下がると、元の合金の塊に

 「Mad Science」電子書籍版も、「元素図鑑」と同じように早くできたらいいと思っていたんですけどね。アプリ版を作るとしたら、やはりすべての実験をビデオで見られないと面白くないと思うんです。でも、ビデオがあるのは、全体の1/4くらい。一部はWebで見られますが、電子書籍にそのまま使えるというものでもないですね。そうすると、ほとんどビデオ撮影をしなおしになると思います。時間もお金もかかりますね。撮影の失敗もあって……。マグネシウムが燃えていると、消火器は役に立たない、という実験「金属は燃えるがままにせよ(Let Burning Metals Lie)」の撮影では、実は最初に撮ったときは、消火器の勢いがすごく強くて、消えてしまったりしたこともありました。

――ビデオの入った電子書籍のように動的なコンテンツが理想形でしょうか? 紙のように静的なものではなく。

 タッチプレスというのは、まだ始めたばかりですが、電子書籍制作のためだけに作った会社なんです。たくさんのプロジェクトがあって、ほとんどはiPad用ですね。紙をただ電子化したものには興味がなくて、「元素図鑑」のようなものにしか興味ありません。時間がかかるので、たくさんのタイトルは出せませんが、興味あるものを作っていきたいと思います。

――iPadのように流通と課金システムが整った環境があれば、マルチメディアCD-ROMの時代にはできなかったコンテンツが普及すると思いますか?

 タッチプレスのパートナーは、BBCで映画やTVの制作をやっていた人で、1990年代のインタラクティヴCD-ROMの制作も手掛けていました。その頃は、制作にかかるお金はTV番組と同じくらい、何百万ドルもかかっていました。今は、ちょっとしたビデオの編集もノートPCでできますし、500ドルくらいでHDビデオカメラが買えるし、映画やTVの人だって、予算5万ドルも出せばハイクオリティの映像が作れる。本を書くよりは今でもお金がかかりますが、本を印刷して出版することに比べたら、実はお金がかからない。だいぶ現実的な提案ができるようになったと思っています。
 ただ、市場が成熟しているのかどうかは、まだこれからです。「元素図鑑」は非常にユニークな成功をしていますが、いい条件がいろいろ重なっているので、次も成功するという証拠にはなりません。かなりお金やリソースをいくつかのプロジェクトにつぎ込んでいるのですが、それが還ってくるかどうか、まったく見当はついていません。ビジネスの営業の人は、スプレッドシートで、いろいろ数字を書いているけど、その通りになるかどうか。結果は1~2年経たないとわかりません。どうなるか、誰も知らないです。知ってるなんていう人はうそつきですよ。

――ちなみにiPadは現在ベストの環境ですか?

 個人的にはKindleも持っています。子供をプールに連れて行って、プールサイドでゆっくり本を読むような時は、Kindleを使いますね。とにかくたくさん文章を読むような場合は。でも、写真でもビデオでも、なにかしら意味のある対話性が出てきたら、Kindleはありえない。
 タッチプレスのプロジェクトとしては、Kindleは考えていません。今はiPadだけです。Androidタブレットが手に入れば……ただ、今のところ、ハードウェアに投資するのは、出版事業に投資するのと同じようなものですね。 iPadの場合、消費者はコンテンツに興味あれば買ってくれるということがわかっていますが、Androidの場合、興味うんぬんより以前に、それにお金を払うつもりがあるのかどうかということさえ、まだまだ不安定要素です。海賊行為も心配要素ですね。今のところは、iPadに焦点を絞り、Androidは様子見ですね。

 子供のころの気持ちと、熟練した化学者の腕を持ち、科学を楽しむコンテンツを次々生み出してくれるGray氏。コンテンツ制作会社タッチプレスの次なる作品にも期待したい。また、10月9日には、日本テレビ『世界一受けたい授業』に出演予定。エクストリーム実験の一部を映像で見ることができる。

著者サイン入り「Mad Science 炎と煙と轟音の科学実験54」プレゼント! 

 応募いただいた読者の中から抽選で1名に、Theodore Gray(セオドア・グレイ)氏のサインが入った「Mad Science 炎と煙と轟音の科学実験54」(オライリージャパン刊)と記事中でも紹介している「いたずらスプーン(Gag with a Spoon)」をプレゼントいたします。下記の「お問い合わせ」フォームから「Mad Science希望」と表記の上、ご応募ください。(応募〆切:10月3日)

本プレゼントの募集は終了しました。多数のご応募ありがとうございました。 (2010年10月4日)

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