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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第55回

もうすぐ登場する日本の電子書籍端末

新KindleとSony Readerから探る電子書籍端末の実力は

2010年09月24日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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 他方で、Kindle 3のみが備えている、圧倒的に有利な特徴もある。それはページ送りの速度だ。とにかく、ムービーをご覧いただきたい。Kindle 2とKindle 3では、ぱっと見てわかるほどの違いが生まれている。

Kindle 2(左)とKindle 3のページ送りを比較。最低でも50%程度は速くなっている印象で、長時間読書をした時のイライラが減少している

 電子ペーパーは書き換え時以外電力を消費しない「メモリー型」ディスプレーである。Kindleなどの電子書籍端末では、ページを切り換える時に「全画面を書き換える」場合が多く、そのため、ページ書き換え時に白黒反転のような時間を挟む。これは好き嫌いが分かれるところだろう。以前の製品は書き換え時間が長く「待たされる」印象が強かった。だが、Kindle 3ではページ送り速度が改善されたため、待たされる印象は大幅に減っている。


ウェブブラウザーも実用的に

 ページ速度の向上は、どうやら利用しているプロセッサーが大幅に向上したためのようだ。従来から、Kindleなどには米Freescale Semicondactor社のSoCが採用されることが多かった。どうやらKindle 3もそうであるようだが、その処理能力やメモリー容量が増強されたことが、いろいろな面でプラスに働いている。

 プラスのひとつはもちろん「日本語対応」だ。従来、電子書籍端末のほとんどには「日本語フォント」や「文字コード処理能力」が組み込まれていなかった。フォントが埋め込まれたPDFなら表示できた(青空キンドルがきれいに読めるのはそのためだ)が、ファイル名はもちろん、テキストファイルの表示もできなかった。

 だが、Kindle 3では日本語フォントと文字コード処理能力が備わったため、日本語の表示が可能になった。プレーンなテキストファイルをコピーするだけで、その内容が読めるようになったのだ。

ファイル名もきちんと表示される

ファイル名もきちんと表示されるようになった。丸ゴシック系ではあるがきちんと「日本語フォント」で、中文向けとの共用ではないようだ

 この恩恵を最大に受けるのが、ウェブブラウザー機能だ。Kindleには「Experimental」(実験的機能)という注釈付きだが、ウェブブラウザーが搭載されている。Kindle 2まではNetfrontベースであり、モダンなPC向けウェブサイトの再現性で、iPhoneなど最新の機器に見劣りしていた。この点はKindle DXも同様である。だがKindle 3では、ブラウザーコンポーネントがWebkitベースのものに変更され、さらに前述のように日本語フォントも搭載されたため、きちんと日本語のページも表示可能となった。

 書籍とは描画モードが異なるのか、ウェブの書き換え時には若干前のページの「影」が残るような印象を感じる場合もあるが、その分、書籍を読む時よりもさらに書き換え速度は速い。ウェブで長文の記事(例えばこのレビューのような!)を読む時にはいい具合だ。ただし、メモリーやプロセッサーパワーの問題か、動作はまだ速いとはいえない。パソコンやiPad/iPhoneの感覚で使うのはつらい。「長文のウェブを読む」のに向いた機能、という感じだ。

 ただし、日本語が表示できるようになったからといって、縦書きを含む「日本語組版」に対応したわけではない。また、日本語の電子書籍が販売されているわけでもない。丸ゴシック系のフォントに違和感を感じる人もいるだろう。あくまで「英語版の機器に、日本語フォントが標準で入った」レベルである。

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