もうすぐ登場する日本の電子書籍端末
新KindleとSony Readerから探る電子書籍端末の実力は
2010年09月24日 12時00分更新
今年は「電子書籍元年」とよく言われる。他方で、「電子書籍なんてほとんど出ないじゃない。どこが元年なんだ。やっぱり日本の出版界は閉鎖的だ」という声もよく聞く。だがこの言説、このところずっと電子書籍関連を取材している筆者からすれば、とても違和感がある。
「まだ始まってもいないよ」。これが、日本の電子書籍の偽らざる姿だ。
ではどうやって「始まる」のか? そのきっかけとなるのは端末だ。今の市場は「読みやすい端末」の登場に引きずられて、そこで販売する書籍が登場する、という形で形成されているためだ。
今回はアメリカで登場した新世代電子書籍端末を、「日本登場後」を見すえつつ試用していきたい。題材はAmazon.comの「Kindle」。俗に「黒キンドル」「Kindle 3」(関連記事)と呼ばれる世代の製品を中心に、旧機種と比較しつつ語ろう。試用というには短時間だが、ソニーの電子書籍端末「Sony Reader」の新バージョンも採り上げる。
なお、今回試用する製品はあくまで「すべて英語版」だが、日本語版になった時のことを頭の隅に置いてお読みいただきたい。
電子ペーパー×WhispernetがKindleの魅力
第3世代でさらに向上
まず最初に、Kindleとはどんなものかをおさらいしておこう。Kindleとは、米Amazon.comが販売している電子書籍端末。特徴は主に2つある。
ひとつ目は、ディスプレーに「電子ペーパー」を採用していることだ。技術に詳しい方ならご存じだと思うが、電子ペーパーは画面書き換え時以外では電力を消費しない、反射型ディスプレーの一種。Kindleで採用されているのは米E Ink社のものである。バックライト型の液晶パネルに比べて目に優しく、長時間読んでも疲れにくい。しかも通信を使わない場合、バッテリーは1ヵ月持つ。筆者もKindleをいつ充電したのか、正直覚えていないくらいだ。
2つ目は、ネット連携機能「Whispernet」を備えていることだ。電子書籍端末では、電子書籍の購入はほとんどすべてネット経由になる。Kindleの場合、当然Amazonから購入する。そのための仕組みがWhispernetだ。Kindle内に内蔵された通信機能を使い、購入した書籍や定期購読した雑誌/新聞などが、自動的にKindle内に「配信」されるようになっている。
また、パソコンやiPhoneなどでも同じ書籍を読むことができて、その際には、それぞれどこまで読んだか(すなわち「しおり」情報)がサーバー側に記録され、別のデバイスで読んだ際には、自動的に続きから読めるようになっている。
これらの特徴は、2007年11月にアメリカで初代Kindleが登場した時から、変わっていない。日本でKindleが話題になり始めたのはちょうど1年ほど前、第2世代Kindleのうち、俗に「国際対応版」と呼ばれるものが登場して、米Amazon.comがアメリカ以外の国への直接販売を開始してからのことだろう。
今回試用するのは、2010年8月に発売された「第3世代」ハードウエア。黒いボディのモデルが用意されたことから「黒キンドル」などとも呼ばれる。正式には、無線LANのみを内蔵した「Kindle Wi-Fi」と、3G内蔵の「Kindle 3G+Wi-Fi」と呼称されている。筆者が入手したのは、最廉価モデルにあたるKindle Wi-Fiだ。以下ではKindle 3と呼称するが、特に記載がない限り、通信については無線LANで利用したもの、とご理解いただきたい。

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