競争しつつも連携を探るソーシャルサービス
今回の発表で大きく注目されたのが、DeNAのモバゲータウンとmixiとの提携だ。まずはモバゲータウンがmixiチェックを導入して相互の送客を図るという。
DeNAの守安功取締役は「mixiはソーシャルグラフ、モバゲータウンは『バーチャルグラフ』だ」とし、これまでに取りざたされてきたような競合関係に両社はないと強調した。
mixiはこれまでも「mixiこそが真のSNS」といった姿勢をとり、他のSNSとは一線を画してきた。
その基本路線はリアルな交流関係を軸としたソーシャルグラフの構築だ。例えば、ソーシャルアプリケーションプロバイダー(SAP)に対して、同一画面内で交流できるのはマイミクだけに限定するよう要請してきた。
リアルでの知人・友人関係、同級生・同窓生といったソーシャルグラブにこだわりを見せるmixiに対して、モバゲータウンは怪盗ロワイヤルのように見知らぬユーザーとの対戦を前提としてサービスが設計されている面がある(例えば、他人のアイテムを盗む、という遊び方はリアルな関係では争いを生む恐れもあるが、匿名の相手を前提とすればその心配は薄い)。
もちろん、完全にサービスの区分が図られているわけではない。実際、9月10日のmixiの発表では、「全国大会」と呼ばれるマイミク以外との対戦・交流が可能なカテゴリーを拡充し、ホーム画面にコーナーを設けると発表している。これはモバゲータウンのゲーム群と競合する可能性が高い。
また、mixiチェックの採用を発表したはてなの位置情報サービス「はてなココ」には写真共有サービスも付随する。この分野ではmixiチェックインやmixiフォトとの競合があるとも言える。
しかし、競合・競争しながらも、技術面での協力は積極的だ。それが、ソーシャルメディアの標準技術仕様「オープンソーシャル」の整備だ。午後のセッションでは、ソーシャルサービス分野では競合関係にある各社の技術者たちが、活発に意見を交わしていた。
今回、mixiはiPhoneへのウェブアプリ(iOS上でアプリとして動作するネイティブアプリではなくモバイルSafari上でアプリのように動く)の展開も発表し同日に公開した。「世界初となるPC・ケータイ・スマートフォンへの3プラットフォームへの展開になる」と原田副社長は述べる。
もともと、この数年来ソーシャルゲームを核として各社は激しいユーザー獲得競争とCP(コンテンツ・プロバイダー)の囲い込み合戦を繰り広げてきた。Facebookというソーシャルサービスのすべてを抱える大手が日本でも存在感を増してきたことが、国内各社の連携・提携を促した背景にあることは間違いない。
そして、それは国内のみならず、中国・韓国のSNS大手とmixiとの提携にもつながった。言葉や文化の違いから、英語圏のサービス進出を阻んできたアジア各社がFacebookにどう対抗できるかに注目が集まっている。またその過程の中で、国内CPが海外展開の道を拓いていく可能性も広がっている。
連載第10回で検索サービスについて解説したように、技術・ビジネスの両面で各社は連携を強めている。競争と連携が断続的に続くことで、結果としてソーシャルサービスの発展が促されることに期待したいところだ。
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