このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第13回

激震ネットメディア。その現状を「再び」俯瞰する。

mixiはFacebookの日本侵攻を食い止められるか?

2010年09月24日 09時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

mixiに求められるのはリーダーシップ

 今回、mixiが一気にオープン化の舵を切ったことで、様々な可能性が生まれることは間違いない。ただし、Facebookがかつて直面したようなリスクが潜んでいることも事実だ。

 オープン化によってソーシャルメディアは、ユーザーのソーシャルグラフの更新情報に加え、Eコマースサイトでの購買などサイト内外でのユーザーの行動情報を一手に握ることになる。その規模はグーグルの検索履歴情報や、ヤフーの行動ターゲティングで収集される情報量の比ではないはずだ。

提携発表のため会場に現われたSKコミュニケーションズCEO チョ・ヒンチョル氏と握手を交わすミクシィ笠原健治社長

 Facebookでは2008年に「ビーコン問題」が起こった。更新情報がデフォルトでソーシャルグラフに公開される仕組みが導入され、それに怒ったユーザー達がFacebookを集団で退会するなど大規模な抗議行動を起こしたのだ。

 現在Facebookは更新情報の公開・非公開をユーザー側にコントロールさせるUIを用意し、この問題はほぼ収束したようだが、これまでクローズドな仕様をとってきたmixiとそのユーザーにとってオープン化はリスクも伴うチャレンジともいえるだろう。かつて日記の著作権でユーザーからの反発を招いた経験を活かせるか問われるところだ。

 より大きな問題として、mixiがプラットフォーム運営者として適切なリーダーシップがとれるかも気になるところだ。

 サードパーティが参加できるプラットフォームは、レギュレーション(参加規定)のさじ加減一つで、参加事業者の利益、ひいてはモチベーションが簡単に変わってくる。

 先に挙げた「マイミク以外のユーザーとの交流を推奨しない」というmixiのSAP(≒CP)に対する方針は、多くのユーザーを獲得したいCPにとっては落胆をもって迎えられた。実際、今年4月のレギュレーション改訂の際、mixiアプリからの撤退を決めたCPも少なくない。

 今回、モバゲータウンと競合する可能性をはらみつつも、「全国大会」型アプリを再びフィーチャーするmixi。ユーザーとCPに対するコントロールは、オープン化によるサードパーティとの向き合いという要素も加わり、ますます難易度の高いオペレーションになりそうだ。

 Facebookも国内CPに対する優遇策をおそらく示してくるはずだ。かつてNTTドコモでiモードのSNS化(公式サイトへのコミュニティの設置)でリバイブに成功したとされる原田副社長の手腕が問われる。

勝敗の鍵を握るのはコミュニティー機能のオープン化

 今回発表されたオープン化によって、mixiでもようやくFacebookのように外部サイトとの連携が本格化する。mixiが期待するとおりの展開となれば、これまで閉じた空間だったmixiに、従来とは異なる層のユーザーが流入してくるはずだ。mixiから離れてしまっていた層も戻ってくるかも知れない。

 前述のようにFacebookをマーケティングに活用しようという動きも盛んになっている。

米コカ・コーラ社がFacebookで運営するファンコミュニティー。2000万人近いユーザーが「Like!」登録をしている

 翻ってmixiではコミュニティー機能はまだ従来の仕組みのままだ。これまでもmixiのコミュニティーの機能は充実しているとは言えず、企業のマーケティングには必ずしも使いやすい状態にはなっていなかった。

 発表では「次のオープン化領域」とされていたが、筆者はコミュニティー周辺のイノベーションが予定されていると予測する。イベント後の広報担当者への取材でもその方向性を認めている。

 コミュニティー部分の進化が十分なものでなければ、せっかくのmixiチェックボタンもうまく機能しないだろう。

 かつてmixiは日記を核としたソーシャルグラフを形成してきた。しかし、Twitterの影響もあると考えられるが、日記をつけるユーザーは減っているという印象がある。

 筆者自身、以前は毎日のように日記を書いていたが、いまは数週間~数ヵ月おきになってしまっている。フローな情報交換と交流ができるTwitterと、情報をストックしていくブログサービスとの間で日記帳としてのmixiの存在意義は薄まっていると言わざるを得ない。

提示されたロードマップ。RSSフィードやコミュニティー周辺のAPI解放がどの程度までされるのかが注目される

 またモバゲータウン、GREEがゲーム、つまりエンターテインメント目的でSNSにアクセスするユーサーからの支持を拡げるなかで、純粋なソーシャルゲームプラットフォームとしてmixiアプリを核とするのも現実的ではないだろう。

 このように考えていくと、コミュニティー機能こそがユーザーがmixiを使い続ける必然性につながるという推論に至る。

 Twitterやニュースサイトなど外部からの関心・嗜好を集約し、コミュニティ内部においてはビジネスサイド・ユーザーサイド双方をつなぐ役割を果たすような進化を遂げられるかどうかに掛かっていると言える。

 そうならなければ、つまりユーザーが留まる必然性を認めるサービスになることができなければ、提携は一転、単なるユーザーの刈り取り場となってしまうはずだ。

 mixiの反転攻勢は、ようやく始まったばかりだ。次の一手が勝敗の鍵を握る。


著者紹介:まつもとあつし

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、ゲーム・映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+iPhoneでGoogle活用術」など。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは@a_matsumoto


■関連サイト

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ