シャープの片山幹雄社長は、27日にも電子書籍端末の製品を行うことを明らかにした。
9月17日に都内で行われた記者懇親会において言及したもので、挨拶の途中に背広の内ポケットから5.5型液晶を搭載した電子書籍の試作機を取り出し以下のように語った。
「単に新しいデバイスを投入するだけでなく、プラットフォーム上で多くのパートナーが参画できるビジネスモデルとしての提案を行うものになる。次世代XDMFにより、多くのパートナーが魅力的なコンテンツを提供できるだろう」
「発売時期については年内にも国内での投入を見込んでいるが、価格などについては27日の会見で明らかにする」
さらに、「日本の携帯電話はガラパゴスケータイなどと比喩されているが、シャープはこのビジネスを、世界に通用するビジネスモデルへと育てていきたい」と意欲をみせた。
また、「この製品投入を機にシャープはクラウドビジネスにも投資を加速することになる。電子書籍向けのクラウドビジネスだけでなく、この仕組みを利用してデジタルサイネージ向けの情報提供サービスにも拡大できる」などとした。
中国に第8世代の液晶工場、国内への投資も継続
一方で、片山社長は、「シャープは大きく変わらなくてはならないと言い続けてきた。その象徴的な取り組みが、地産地消の戦略である。これは時間がかかると認識しているが、液晶パネルも太陽電池も、日本で作って輸出するのではなく、消費地で生産する仕組みが昨年から本格的に動きはじめている。これは日本の産業の終わりではなく、新たな始まりである。日本に置いておくもの、海外に広げるものとを明確に切り分けていくことが必要である」とした。
また「亀山第1工場の第6世代の液晶生産設備はすでに日本から中国・南京に運び出しており、設備搬入の準備が整っている。来年春には生産が立ち上がる。第8世代の設備については、いまは当局の認可待ちの状態だが、次の展開に向けて準備が進んでいる。いまは亀山第1工場のなかにはなにもない」などと語った。
イタリアのエネル社およびSTマイクロと進めているシチリア島での薄膜太陽電池生産についても、「今年7月に新会社が発足し、来年度中には稼働することになる」とした。
加えて、日本国内のLEDの生産設備に投資を行っていることについても言及。
「大口径ウェハーの生産が可能なように三原工場、福山工場への投資を決めた。これは政府の補助金もある。LEDを活用した照明事業、LEDテレビへの採用などが進展しており、世界的なLED需要に応える必要がある」とした。
さらに「健康、安心といった需要は世界的にも根強いものがあり、プラズマクラスターイオンを世界に向けて売りに行っている。認知されるまでには時間がかかるだろうが、ASEANでも、欧州でも注目があり、いまは種を蒔いている段階。海外ではインフルエンザウイルスの抑制といった効果などを、1人でも多くの人に感じてもらいたい」と語った。
なお、大阪・堺のグリーンフロント堺の第10世代の液晶パネル生産を、10月以降、フル生産体制とすることを明らかにした。同工場では、2010年7月から、月7万2000枚のフル生産体制としていたが、パネルの需給パランスをみて減産していた。
グリーンフロント堺では、4原色のクアトロンパネルを生産しており、これを搭載した液晶テレビの販売が好調。「クアトロンは、40V型、46V型、52V型、60V型を用意しているが、販売台数でも最も売れているのが60V型。大画面モデルが高い評価を得ており、第10世代は40V型の生産に効果が大きいが、大画面向けにも効果が発揮できる」などとした。
低価格モデル発売に意欲も
政府および日銀の為替介入については、「85円に戻したが、そのレベルの話では考えてはいない。さらなる効果を期待したい。さらに、ドルだけが焦点ではなく、新興国の通貨に対する関係も考えていかなくてはならない。世界で戦う上では、韓国のメーカーに対して為替での差が大きい。いまは高機能付加価値モデルを主力としているが、為替の条件などが相手と揃えば、より低価格なモデルの展開も積極化できる」などとした。
8月31日に突然退任した松本雅史代表取締役副社長については、冒頭の挨拶のなかで片山社長が説明。「大病を煩い、8月末に辞任することになった。携帯電話事業、AV事業の立役者であり、残念である。9月から新体制で臨んでいる」と語った。
