DSDのデメリット「聴けない」を解決するために
DSDの問題は、再生環境が極端に限られることだ。「DSDファイルをディスクに移してSACDプレイヤーで再生する」「PlayStation3を使いHDMIケーブル経由で再生する」という例がOTOTOYのサイトでも示されているが、カジュアルなリスナーにはハードルが高い。
SACDをオーディオマニア向けに売ろうとした経緯もあり、ただでさえカジュアルなリスナーには縁遠いイメージのDSDである。現在のように、iPodのようなポータブルプレイヤーを中心とした手軽に楽しめる環境があれば、DSDは配信フォーマットとして活きてくる可能性もあるのに、そこが惜しい。
その一端として面白いと思えたのは、DSDのポータブル録再機「KORG MR-2」の存在だ。高音質なフィールドレコーダーとして売られているものの、SDカードにDSDファイルをコピーすれば、好きな場所と機器で聴けるDSDポータブルプレイヤーになる。
iPodほど手軽にというわけにはいかないし、再生専用機にしては大きすぎるが、今のところiPodのようなポータブルDSDプレイヤーを望める状況ではない。フィールドレコーディングや楽器の演奏もするというなら、この録再機はかなり便利に使えるだろう。
実際のところ、試聴会の取材から帰り、このレコーダーを取材用に買おうかどうか、大いに悩んでいるのである。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。