検索を支える技術に注目してほしい
以上、Justy Finderの特徴に関して簡単に触れた。それでは冒頭の疑問、「なぜセキュリティーの会社が価格比較サービスを始めたのか」の秘密に迫っていこう。
実は筆者は、報道発表資料にある「これまでのソフトウェア開発で培った技術を結集~」という言葉に引っ掛かっていた。セキュリティーと価格情報の検索技術の間にある関係性。そこに問題を解く鍵があるハズだ。
取材を通じてその答えが出た。
実はハミングヘッズは、内部監査のために「Super Search Engine」(SSE)という高速な全文検索ツールを提供している。これは日々蓄積されるユーザーの膨大な操作履歴(ログ)の中から、管理者が必要な情報を取得し、よりセキュリティーと統制の利いた業務環境を実現するために活用されている。
同時に「Intelligence Platform」(InP)というGUIベースの自動化アシスタントもリリースしている。これは簡単に言うと、OS上で人間がマウスやキーボードを使って実行する操作を記憶させ、自動化できるソフトである。
このSSEとInPで培った技術が、Justy Finderには応用されている。
つまり、サーバーにインストールされたロボット(InP)がネット上にあるECサイトの情報を端からすべて、全文選択・コピー&ペーストして、テキストだけの情報を抜き出していく。そのテキストから全文検索(SSE)で、合致する商品名と価格を順番に抽出する。そして結果をウェブブラウザー上に、価格が安い順に表示する。
こうした非常にシンプルな仕組みなのである。
大企業での運用実績もノウハウの一部
サービスとして実際に稼働させるためには、検索にヒットした製品名や価格が妥当なものなのか、どのようなサイトをECサイトとして認識するかなどを決めなければならない。そこには独自のノウハウがあるという。誰もが価格比較サイトを始められるということではない。
しかし、企業向けのソフトウェア製品開発で培った技術がJusty Finderには着実に応用されているのは確かだ。
ハミングヘッズのサーバールームには、テキストのみで現在30GBほどの収集データが記録されている。これを検索すると、全文検索でありながら2秒以内と高速に結果が返ってくるという。
インデックスなどを使用しない全文検索であることを考えると、これは驚くべき速度だ。ハミングヘッズのソフトを活用しているある大企業では、毎日130~150GBまで膨れ上がるデータを数秒で検索しなければならないという。そのために必要なシステム運用のノウハウもJusty Finderに生かされた。
Justy Finderの企画が始まったのは9ヵ月。最初の5ヵ月で設計、残りの4ヵ月が実装に使われた。比較的短期間で、サービスインにこぎつけられた背景には、こうした下地があったことももちろん関係している。
認知度を高め、既存製品とシナジーを狙う
ハミングヘッズは、これまで大企業のセキュリティーのために用意してきた同社の製品群をさまざまな分野に応用していきたいと考えている。
無償公開という形で、多くのユーザーにサービスを使ってもらえば、一般コンシューマーなどにハミングヘッズとJusty Finderの認知が広がるはずだ。SSEやInPなどを企業に売り込んでいく際にも、Just Finderを実現しているのと同じ技術が使われていると言えば、担当者の理解を得やすいだろう。
つまり意外に感じた「セキュリティーの会社が始めた価格比較サイト」というコンセプトは、突拍子のないものではなかった。自社のリソースを有効活用し、新しいビジネスを広げ、既存ビジネスとのシナジーも狙っていく。そこにハミングヘッズの狙いがあったのだ。
実はJust Finderの検索結果の右側にはSePの大型バナーが表示される。初めは価格比較だけを目的としてきたユーザーも、このバナーを見て、ハミングヘッズやその製品に興味を持つかもしれない。そうすればしめたものだ。