人気機種MAJIK DS-Iを聴く
KLIMAX DSの発表後、LINNは「AKURATE DS」(89万2500円)、「MAJIK DS」(45万1500円)など、より低価格な製品を次々に発表し、DSのラインアップを広げた。
同時にスピーカーをつなぐだけで手軽に使えるアンプ一体型の機種も投入し、「SNEAKY DS」(29万4000円)、「SEKRIT DS-I」(27万3000円)、「MAJIK DS-I」(47万5000円)などが登場している。
今回は合計6モデルを数えるLINN DSシリーズの中から、「価格と音質のバランスが絶妙」とマニアから高い評価を受けている「MAJIK DS-I」を聴いた。昨秋発表の最も新しいモデルで、プリメインアンプ「MAJIK 2100」(36万7500円)に「MAJIK DS」並みの機能を追加したもの。価格もそれぞれを別個に揃えた場合より40万円近く安価だ。
銀座のショールームで取材に対応してくれた、リンジャパンの山口伸一代表取締役は、DSシリーズは「ゼネラルな層」と「芸術としてのハイエンドオーディオ」のかけ橋になる存在だと話す。
MAJIK DS-Iは、DSシリーズではエントリーに近い製品となるが、出音も大変に素晴らしい。音源の持つ豊富な情報量を克明に引き出しつつ、立体的で広がりある音場を展開。特性だけでなく音楽のおいしいところをのびのびと引き出す、LINNのほかの機種にも通じる「巧みな音づくり」を感じさせる。
「LINNは音楽大好きな集団なんです」と山口氏は胸を張る。そして、革新的な技術を先駆けて取り入れていくことにも野心的だという。
アナログプレーヤーとDSの意外な接点
LINNは1972年の創業。創設者アイバー・ティーフェンブルンの「Hi-Fiシステムは画期的によくなる」という信念のもと、ターンテーブル「SONDEK LP12」を発表した。LINNのロゴはこのターンテーブルの下側に設けられたシングルポイントベアリングを象ったものだ。
機械加工技術とデジタル技術。その領域は異なるが、確固たるテクノロジーにこだわってきた点で「LP12とDSはとてもよく似ている」と、山口氏は話す。
「アナログレコードをノイズなく、むらなく再生するためには高い工作精度が必要となります。LP12も当時の最先端技術から生まれた製品なんです。LINNはテクノロジーに貪欲な会社で、早い段階からCADを採用し、半導体を作っていた時代もありました」
LP12は発売から30年以上たった今でも、現役の製品である。レコードの回転に応じて柔軟に稼働する「フローティング構造」のターンテーブルが特徴で、これはシングルポイントベアリングの1点支持で実現している。その実現には精密な金属加工技術と摩擦の回避がカギとなる。中央の軸(スピンドル)は高硬度なバイト刃(切削工具)で炭素鋼を削って造られたもの。これが鏡面仕上げで形状も美しい、軸受に接する。
LINNが重視する「継続性」「アップグレード可能」という思想を体現してきたのもLP12だ。実はLP12は10年ほど前に一度品切れになったことがあった。軸受用素材が入手困難になったためだ。しかし、LINNは世界中から素材を探し出して解決している。
アーム、サスペンション、モーター、フォノイコ、電源……などのパーツも改良を重ねながら進化を続けてきた。これらのパーツは、どの年代のLP12でも利用が可能。部品交換すれば、ユーザーはいつでも現行のクオリティに迫る性能を手に入れられる。
この思想はDSシリーズにも受け継がれている。LINNはDSシリーズの継続的な進化を約束しており、ファームウェア(Cara)やクライアントソフト(Kinsky/Konfig)は数ヵ月の単位で、最新のものにアップデートされている。DSシリーズも、KLIMAX DSの発売以来3年間、常に進化を続けているのだ。
例えばDSシリーズが当初対応していた形式は、WAVEとFLACのみ。その後、MP3、AIFF、Apple Lossless、AAC、WMAなど多彩な形式が追加されてきた。
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