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週刊 PC&周辺機器レビュー 第71回

20万円を切った3D映像対応の一体型PC AE2420 3D

2010年09月09日 12時00分更新

文● 池田圭一

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 ちなみに3D変換モードでは、視聴中プレイヤー右下に表示されるゲージを操作することで、3Dステレオ映像の奥行き感(深度)と、奥行きの基準となる位置(深さ位置)を調整できる。このパラメーターや動画ファイルの2D/3D方式は、個々の動画ファイルごとに記録されるので、次回再生時には前回と同じ再生モード、深度・深さ位置の設定値で表示されるのがうれしい。

リアルタイムで深度や深さ位置を調整できる

3D変換では、視聴中にリアルタイムで深度や深さ位置を調整できる。深さ位置を右にスライドさせると、画面から飛び出して見えるようになるのがおもしろい

 DirectX対応の3D表示用ドライバー「iZ3D」(MSI専用版)もインストールされている。iZ3Dは、2Dポリゴン表示のDirectX(あるいはOpenGL)対応ゲームを、アナグリフなど各種の方法で3Dステレオ映像化するものだ。DirectX 9対応のゲームなどでリアルな3Dステレオ映像が実現することで知られている。iZ3Dのサイトでは、AE2420 3D用のドライバーセットを配布していることからして、先ほどのCineView 3D変換も、iZ3Dが担っているのかもしれない。

iZ3Dの設定

iZ3Dの設定。DirectX対応のゲームなどを3D化するソフトだ。CineView3D変換と同様に、3D表現の深度や位置調整もできる

 というのも、「MMD」(Miku Miku Dance)などの3D-CGソフトで作成した映像をCineView 3D変換したところ、立体化の相性がとてもよかったからだ。また、デジカメで撮影した風景動画を3D変換した映像も、意外と効果的だ。逆に、デモンストレーション用に用意されていた3D対応動画(3D対応のシネマ用動画)では、画面サイズの関係からか不自然な立体化に見えることもあった。

MMDのデフォルトキャラクターを3D変換してみた

MMDのデフォルトキャラクターを3D変換してみた。一様に左右にブレるのではなく、頭部と胴体部でブレ幅が異なっているのがわかる

この状態で3Dメガネをかけると

この状態で3Dメガネをかけると、2Dのキャラクターが3D化され、目前で立体フィギュアが踊っているように見えてくる

 iZ3Dがあるのだから、DirectX対応のゲームを3Dステレオ映像で楽しめる(と思われる)。その際は、iZ3D Control Centerの設定で「Stereo Status」を「Enable Stereo」に、「Output」を「3D Shutter Mode」にし、「Force 120Hz」にあわせればよい。


パーソナルユースに向いたオールインワンPC

 MSI製品で、凝ったデザインのタッチパネル液晶ディスプレー一体型と言えば、リビング向けパソコンとして販売されることが多かった。「AE2220」(タッチパネル対応21.5型ワイド液晶ディスプレー搭載)は、アピールの方向性からしても家族向けのパソコンであろう。しかし、AE2420 3Dは3Dステレオ映像に対応したことで、よりパーソナルユースのパソコンへとベクトルが向いたように思える。

 同社が得意とするゲーミングパソコンとしてスペックを見てみる。CPUはCore i5-650(3.20GHz)、メモリーはDDR3-1333 4GBを搭載。内蔵HDDも1TBと、一体型としては大容量だ。USB 3.0といった先進機能も有している。

THX TruStudio PRO

音響効果を付加できる「THX TruStudio PRO」を搭載。バーチャルサラウンド機能のほか、mp3など圧縮音源の再現性を高める「CRYSTALIZER」などの機能を持つ

 採用するOSのWindows 7 Home Premium 64bit版は、何のストレスを感じることもなく快適に動作し、フルHD解像度のH.264/MP4ファイルなどもスムーズに表示する。HDMI入力機能もあり、ゲーム機やテレビレコーダーからの映像出力を表示することも可能だ。映像表示だけでなくオーディオ機能も充実している。5Wフルレンジのステレオスピーカーを内蔵し、さらに10Wのサブウーファーも搭載。「THX TruStudio PRO」により2.1チャンネル、あるいはバーチャル7.1チャンネルのサウンド再生も可能だ。

 ただし、個々のソフトウェアの連携には、改善の必要を感じるものもある。例えば、フレームシーケンシャル方式3Dステレオ映像は液晶シャッターメガネを用いる以上、メガネをかけたときに映像が暗くなってしまう。だが、その際にLEDバックライトを自動的に明るくしたりはできない。また、サラウンド対応コンテンツ再生時にのみ、THX TruStudio PROを効かせる機能もほしかった。

 将来的には、YouTubeやニコニコ動画などの再生時に、3Dステレオ映像を可能とする仕組みも必要とされるはずだ(現時点ではテスト的なコンテンツが存在するだけ)。また、多人数で3Dステレオ映像を楽しむために、液晶シャッターメガネの追加購入なども提供してほしいものである。

 24型クラスの一体型パソコンとしては、19万8000円の本機が少々高額なのは確かだ。しかし、BDコンボドライブや11n対応無線LAN、Bluetooth 2.1の内蔵、地デジチューナーの同梱にワイヤレスキーボード/マウスの添付など、細かな点での付加価値が高く、CPU・メモリー・HDDなどの基本スペックも満足できる。

 何より、3Dコンテンツを心底愉しみたいというなら、3D対応テレビよりもAE2420 3Dのほうが汎用性が高い。国内の住宅事情、置き場所の問題はついてまわるが、「3Dをはじめてみよう」というなら、機能・パフォーマンスともに揃ったオールインワンのAE2420 3Dは、有力候補となる製品だ。

AE2420 3D の主な仕様
CPU Core i5-650(3.20GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス Mobility Radeon HD 5730
ディスプレー タッチパネル搭載23.6型ワイド、1920×1080ドット、3D対応
ストレージ HDD 1TB
テレビ機能 USB 地デジチューナー付属
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n
インターフェース USB 3.0×2、USB×4、eSATA、HDMI入力、アナログRGB入力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅612.2×奥行き71.95×高さ461.7mm
質量 約12.5kg
OS Windows 7 Home Premium 64bit
価格 19万8000円

筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


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