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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

電子書籍端末、電子マネー、日本は2周遅れなのか?

2010年09月03日 06時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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台湾でいちばんインパクトを受けたのは……

 ところで、今回、台湾でいちばんインパクトを受けたのは、ショウ会場で見かけたものではなかった。iPhoneで使うGoogle Mapsやfoursquareの便利さにも確かに感動した(ソフトバンクの海外パケットし放題のおかげ。9月から始まるドコモの海外パケホーダイのほうが制限が少なくさらに期待だが)。しかし、いちばんのインパクトは、意外やわたしのポケットの中にあったのだ。

 わたしの「Tattoo」(Android端末)は、昨年11月に香港で買った台湾モデルである。その中に、台湾のSuicaといえる「EasyCard」のアイコンがあるのには気づいていたが、台湾に行くことがなかったので、起動したこともなかった。ところが、これをひとたび立ち上げると「うーん」とうならせられた。具体的には、以下のYouTube映像を見ていただくのが早いかもしれない。

 聞けばTattooは、裏ぶたに電子マネーのモジュールを組み込めるのだそうな。そこまでだと、日本のケータイなんかはとっくに「おサイフケータイ」になっているゾ! となるのだが、なんと言ってもこのAndroidソフトには目を覚まさせられる。

 自分の今いる位置の近くでEasyCardを使えるお店が、地図上にすみやかに出てくる。買い物やレストランや駐車場など、切り替えて見ることができるようだ。何でもない機能のように見えるし、事実、日本のガラケーでもできそうなものでもある。ところが、調べてみると、日本の電子マネーでは「Edy」が、お店の名前を文字で入れて「店舗検索」できるくらいしかやっていない。

 そのEdyも、ポイント交換がもっぱらのウリになっているという意見もある(楽天傘下になったことで、それがキラーになる可能性もあるが)。「ポイントは単なるディスカウントになってはいけない」とは、名著『エスキモーに氷を売る』(ジョン・スポールストラ著、中道 暁子訳、きこ書房刊)に書いてあったことだ。儲けさせてくれる客を集めるツールであり、彼らに金を使わせるしくみがポイントであるはずなのだ。

■Amazon.co.jpで購入

 その点、このEasyCardアプリは、客をお店まで具体的に誘導する。Google Mapsベースなので、経路探索もできるのだろう。Androidならその柔軟性を生かして、適切なソフトと連携し、ほかのクーポンに繋ぐようなサービスの開発もできるなはずである。

 そしてもうひとつ、このソフトには重大な効果があると思う。先のYouTubeビデオを見たら、たいていの社長なら「なぜうちはEasyCardと提携していないのだ!」となると思うからだ。このソフトの画面の視覚効果は、絶大ではないかと思う。

 さて、これを見て、わたしは「日本の電子マネーは2周遅れではないか」というようなことをTwitterでつぶやいてしまった。たかだかアプリを1個さわっただけで、その全体像を把握しているわけでもなく、ちょっと適切ではなかったとも思う。電子書籍も電子マネーも、日本は技術的には、1周遅れどころかむしろ進んでいるとも思える。

VEB632

ViewSonicの電子書籍端末「VEB632」。金庸の著作を多数収録して、価格は1万4800台湾ドル(約4万円)

 しかし台湾は、技術的な部分はさておき、さっさと製品を出して、しかもすでに適切なサービスを始めているのだ。

 2周遅れというのは、「すでに自分が遅れているのに、遅れていることに気づかなくなっている状態」のことなのかもしれない。遅れというのも「質的」なものだから、2周という言葉の妥当性があるわけでもない。しかも、台湾の電子書籍や電子マネーソフトの活用も、まだこれからというのが本当だろう。

 しかし、この原稿を書いている途中に、台湾でeBookTaiwanを展開しているイーブックジャパンの高嶋さんからメールをもらったのだ。

 同社は、昨年、iPhone/iPod touch向けの電子書籍配信を開始した。今年のはじめには、それが10万冊ダウンロードされたというリリースを出している。そのイーブックジャパンで、7月は「iPad向け」のダウンロード数が、「iPhone/iPod touch 向け」のそれの2倍だったという。

 世界は、どんどん動いている。2周遅れにならないように注意しましょう。

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