「お高い」のは複雑な仕組みのため
だが、「ニコニコ実況」の面白さが受け入れられているのであれば、テレビメーカーが機能として導入すべきではないか。それに、業界としては安くても、ユーザーにとって1万9800円は高い。実況で遊ぶユーザーも、中心は10~20代だ。
どうしてそうなっているのか尋ねてみると、その理由は「仕組み」にあると教えてくれた。
日本のテレビには「放送番組及びコンテンツの表示中に、それと全く関係がないコンテンツ等を意図的に混合、または混在提示しない」というルールがある※。つまり、今回のように「字幕」をつけたものを、「テレビの機能」として売るわけにはいかないのだ。
※ ARIB資料より、TR-B14 「9.3 放送番組及びコンテンツ一意性の確保」。これは誰かがつくった番組をつくりかえて流通させないための機構。つまり、番組を作る人々をしっかり守ろうという条項だ
そのためデジタルテロッパは、プロセッサーを2つ積むことになった。1つは映像に字幕を重ね合わせるための処理専用のもので、もう1つはその他の入出力処理に使うもの。それをあくまでテレビの「外側」で処理をすることで、字幕をつけている。
テロッパが字幕を生成する流れは下のようになる。
デジタルテロッパの仕組み
1) テレビ番組のHDCP(コピーガード)を解除し、HDMI経由でデジタルテロッパに送る
2) プロセッサーでベクターフォントの字幕と合成し、ふたたびHDCPをかけなおす
3) HDMI経由でテレビ側に映像を戻し、字幕つきのテレビ番組として表示する
非常にややこしい流れだが、これで初めて「字幕つきのテレビ番組」が実現できる。この「2プロセッサーシステム」によって大幅にコストがかかり、現在の価格になっているのだという。デジタルテロッパがチューナー機能を搭載しないのも、やはり同じ理由だ。
ちなみに、コメントが集中する「弾幕」の対応もコスト面から見送った。ただ、3行のコメントでも「盛り上がり感」が伝わるよう、字幕のスピードを高速化できるよう工夫している。