EPUB書き出し機能を試す
さて、肝心のEPUB書き出し機能だが、さほど難しい話ではない。EPUBに変換したい文書を開いた状態で、メニューバーから[ファイル] - [書き出す...]を選択し、「ePub」タブにタイトルや作成者などの情報を入力すればOK。[次へ...]ボタンをクリックし、ファイル名と保存先を指定すれば、EPUBファイルが生成される。
ただし、どのような文書でもEPUBとして書き出せるわけではない。EPUBはリフロー(端末/表示ソフトの画面幅にあわせて文字数やレイアウトを動的に変更する機構)を前提としたフォーマットであるため、表組など小さい画面との相性がよくない要素もある。
EPUBの規格でサポートされない要素は、EPUBファイルに書き出した時点で削除される。Appleが「iWork アップデート 9.0.4」とともに公開したWebページ「PagesでePubファイルを作成する方法」によれば、背景オブジェクト、ヘッダー/フッター、脚注、段組、コメントなどが対象になるという。「各章でエンコードされていないイメージデータの割り当てが11MBを上回る場合」も削除されるとのことなので、図版の点数やサイズにも気を配らなくてはならない。なお、「ページレイアウト」テンプレートで作成した文書は、EPUBに書き出そうとする時点で拒否される。
日本語への対応だが、縦書きとルビがサポートされない -- そもそも現行バージョンのEPUBでは標準サポートされていない -- ことを除けば、英文と大きく変わらない印象だ。文字化けすることもなく、左右に寄せた文もそのとおり再現される。「iBooks」(iPhone 4/iPad)と「Adobe Digital Editions」で表示を確認したが、Pages特有の問題点は見つからなかった。
タイトルや見出し/小見出しに適切なスタイルが設定されていれば、自動的に目次が生成される点はうれしい。実際、前掲のWebページ「PagesでePubファイルを作成する方法」で公開中のサンプル文書(EPUB Best Practices for Pages)をEPUBに変換すると、きちんと目次が生成されていることを確認できる。EPUB作成時において手間のかかる作業なだけに、歓迎されるのではなかろうか。
気になるのは、Appleによる「独自拡張」の部分だ。前述した資料には、「書類内のビデオの埋め込みをサポート」と「iBooksのメモをサポート」とあるが、いずれも現行バージョンのEPUBでは標準の仕様として定義されていないため、iBooks以外のビューアでは表示できないと考えられる。この点については、機会を改めて検証してみたいと思う。
筆者紹介──海上忍
ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、Amazon.co.jpで見る)など。
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