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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第78回

人気サイトなんてなるもんじゃない 医学都市伝説・作者が語る

2010年08月31日 12時00分更新

文● 古田雄介

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ネタ探しの意識が本職でも役に立ちました

―― コンテンツについて質問します。坂木さんは都市伝説を紹介する際、真偽を明らかにするというより、なぜ広まったのかに重きを置いている気がします。これは意図的ですか?

坂木 罵詈雑言が起きにくい方向で書いていこうということです。「こんなのウソです」と書いても、「そんなはずはない。俺は聞いたんだ」とかたくなに信じ続ける人もいて、そういう人から攻撃されたりする場合があるんですよ。そういう人に「いやウソだから」と反論しても不毛ですし、付き合いきれない。

 それより「なぜそういう噂が、ありありと語られるようになったのか」という点に注目したほうが、つまらない批判もされにくいんです。真偽は置いて、どういうところがリアリティの根拠になっていて人の関心を集め続けているのか。そういうところで語るしかないと思いますね。なにより、都市伝説というのは口承芸だから、そのエンタテインメントの構造を分析したほうが面白いですし。

「プルトップで車椅子」の下りには、真偽論争の痕跡がみられる。缶ジュースのプルトップが分離する時代、プルトップを1万個集めて医療関係の施設に持って行くと車椅子がもらえるという噂が流れていた。坂木氏がこれを都市伝説=ウソという前提で紹介したところ、「実際に受け付けている病院もある(あった)」といった反論が多数寄せられたという。しかし、現実の取り組みよりも噂の発生時期のほうが早いため、一部の病院がこの噂ありきで実施したというのが実情らしい。噂が都市伝説となり、都市伝説が現実となったケースだ

―― なるほど。ちなみに、ブログ形式になってから都市伝説色をあまり出さないようになったのは、世間的に都市伝説がブレイクしたことと関係があります?

坂木 いえ、単にネタが切れたのが理由です(笑)。現在も職場でそういう情報を探したり、自分でつくって広めてみようとか考えているんですけど、やはりなかなかいいのがなくて。とはいえ、意地で毎日更新を続けていた時期でもありますし、辞めようという気はないので、ほかのネタを色々探すようになりました。

―― どんなネタに行き着きましたか。

坂木 埋め合わせとして、医学雑誌の中にある、妙な論文を探して紹介することも多くなりました。かなりマジメな雑誌でも、たまにヘンな論文があるんですよ。都市伝説の後はそればかり載せている時期が半年くらい続きました。今は割とノンジャンルで自由に書いているんですが、それでも月に一回くらいのペースで紹介しています。

パソコンに向かう坂木氏。医学雑誌の変わった記事を翻訳して紹介することもあったという

―― お仕事での情報収集を有効活用した感じですね。

坂木 いえ、逆ですね。私は志というのがそんなに高くないわけですよ。だから、何もないと自分の仕事に直接関係するようなところしか読まなくなります。ですが、ネタを探すために、自分の領域だけじゃない記事にも目を通すようになって、全体的な医学領域の情報が眺められるようになっているんです。

 そうやって他の科の情報に興味を持ち続けられるというのは仕事にかなり役立っていますね。志が低い読み方ですけど、広い視点で情報が拾えるのは非常に良いことだと思います。そういう意味でも、サイトを続けていて良かったと思いますね。

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