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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第5回

人生、浪人でいいじゃないか 「地味アニメ」作る理由

行き場ないのは本当に不安? アニメで描く時代の闇 【後編】

2010年09月04日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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「庵野アニメ」には出来ないことを

―― 迷いがないように見える監督が、一体どんな焦る対象があるんですか?

望月 若いころなんかは特に焦ってたけど、アニメの演出という仕事を選んだわけですから、その中で上に行きたいと思っているわけです。今だって、同年代のヤツがすごいヒット作を出すと、それは、顔には出さないで知らんふりをしているけれども、内心は悔しいですし。そういうのはありますよ。

 だって、自分はどう逆立ちをしても「エヴァ」(「新世紀エヴァンゲリオン」)みたいな大ヒット作は作れない。庵野(秀明)ちんだって、同世代ですからね。年がほぼ一緒なんですよ。大学のアニメサークルから出てきてプロになってと。辿ってきたルートが似てたりして。

 アマチュア時代から全国的な上映会とかで顔見知りだったんですけど、向こうは「DAICONフィルム」とか「帰ってきたウルトラマン」とかを作っていて。周囲からは「西にすごいマニアがいる」という声が聞こえてくる、みたいな感じで。プロになってからも、なにかと「庵野秀明」という人物が目に入ってくる(笑)。

 こいつはすごいなと思いつつも、でも自分には「エヴァ」は作れない。

DAICONフィルム : 庵野秀明監督も所属していた、自主制作アニメの団体。「新世紀エヴァンゲリオン」を生んだアニメ制作会社「GAINAX」の前身となった。奇妙な名称は第20回日本SF大会の通称「DAICON3」(ダイコン・スリー)から

―― 作れないと思って、それでどうしましたか。

望月 だからもう、しょうがねえやというか。その代わり、庵野ちんには「さらい屋五葉」みたいに地味な雰囲気のアニメーションは多分出来ないと思うわけですよ(笑)。「地味」には地味の良さがあるということで。だから、しょうがねえやと。「地味に辛気くさい」みたいなアニメーションの作り方が俺には合っているし、自分でもそれが面白いと感じるんですね。

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