Office 2010のパッケージ版のリリースに合わせて、ウェブ版のOffice「Office Web Apps」のサービスが開始されている(関連記事)。提供されているのは、Word(Word Web App)、Excel(Excel Web App)、PowerPoint(PowerPoint Web App)、OneNote(OneNote Web App)の4つのサービスだ。
サービス開始当初は、Office 2010のユーザーだけが先行してOffice Web Appsのサービスを利用できるが、10月までには全世界のWindows Liveのユーザーが利用できるようになると、マイクロソフトでは説明している。日本のWindows Liveユーザーに関しては、すでにOffice Web Appsのサービスが提供されているようだ。実際に新しくHotmailのアカウントを取得すると、そのアカウントでOffice Web Appsが利用できるようになっていた。
今回は、Office Web Appsの特徴と最新情報についてを解説しよう。
Office Web Appsの特徴は
Office Web AppsはマイクロソフトのOffice事業部が開発している。そのため、ユーザーインタフェースは、Office 2010で採用されているリボンUIがそのまま使われている。そうは言ってもOffice Web Appsでは、Office 2010のすべての機能が再現されているわけではない。そのため、リボンUIに表示されるコマンドやタブの数も少なくなっている。
UIと並んで重要な点は、Office Web AppsではOffice 2010のデータがそのまま利用できることだ。マイクロソフト製以外のOfficeスイートとしては、ウェブ版の「Google ドキュメント」やパソコン用アプリケーションの「OpenOffice.org」「Kingsoft Office」などが有名だ。これらのサービスやアプリケーションは、マイクロソフトのOffice製品で作成したファイルとの互換性を特徴としている。
しかし、ほとんどのサービスやソフトでは、Microsoft Officeの文書と完全な互換性を持っているわけではない。例えば、Wordで作成した文書をGoogle ドキュメントにアップロードしても、Wordと同じ画面イメージが表示されるわけではない。変換したとたんに、Office 2010独自の機能が抜け落ちてしまうということもある。
その点Office Web Appsなら、マイクロソフト自身が開発しているため、完全な互換性を持っている。Office Web Apps上でサポートされていない機能も、データフォーマットとしては完全にサポートされている。
一方注意が必要なのは、Office Web Appsの文書はOffice 2007以降の文書フォーマット「Office Open XML」(拡張子としては、.docxや.xlsxなど)を使用していることだ。そのためOffice 2000/XP/2003などの文書(旧形式、.docや.xls)は、そのままでは使用できない。
ただし、SkyDriveに旧形式のファイルをアップロードすれば、Office Web Appsでそのファイルを編集する際に、自動でOffice Open XMLに変換したファイルが新しく作成される。拡張子だけ異なる同じファイル名で変換後の文書は保存されるので、間違えにくい。編集作業も、変換したファイルに対して行なわれる(変換前のファイルは編集されない)。
Office 2010には直接Office Web Appsに文書を保存したり、読み込む機能が用意されている。また逆に、例えばWord Web Appから直接Word 2010を起動して、ファイルを読み込ませて編集もできる。文書は自動的にWord 2010にダウンロードされ、ユーザーがSkyDriveからファイルをパソコンにダウンロードしてから編集、といった面倒な手順は必要ない。
アップロードに関しても、ネットがオフラインの時は処理をためておき、オンラインになった時に、自動的にアップロードする「Office 2010アップロードセンター」というソフトも用意されている。
ただし、Office Web AppsからOfficeクライアントソフトを起動する場合は、Office Open XMLフォーマットの文書がクラウドからダウンロードされてくるため、これまたOffice 2000/XP/2003では編集できない。Office Web Appsと連携するためには、最低でもOffice 2007、できればOffice Web Appsとの親和性を高めているOffice 2010が必要になる。
対応するウェブブラウザーは?
Office Web AppsはマイクロソフトのInternet Explorerだけでなく、他社のウェブブラウザーやOSでも動作するように作られている。Office Web Appsは、Ajaxなどのスタンダードなテクノロジーで構築されており、IE向けウェブアプリでよく使われる、「Active X」で作成されたプログラムは必要ない。
IE8/7以外にも、Firefox 3以降やMac OS X用Safariなどのウェブブラウザー上でも利用できる。GoogleのChromeに関しては正式サポートはアナウンスされていないが、筆者がテストしたところでは、ある程度動作している。
とはいえマイクロソフトでは、Office Web Appsの利用に「Silverlight」のインストールを勧めている。Silverlightを導入することで、Office Web Appsでのページの読み込みが高速化されたり、PowerPointではアニメーションがよりなめらかに表示されたり、文字フォントを綺麗に表示することが可能になるという。
SilverlightはIE8/7/6のほかに、Windows OS上のFirefox 3やChrome 4、Safari 3/4、Mac OS X上のFirefox 3、Safari 3/4などに対応している。もしOffice Web Appsを利用するなら、Silverlightをウェブブラウザーにインストールした方がいいだろう。
次ページからは、各Web Appについて詳しく見ていこう。

この連載の記事
-
第50回
PC
次期IE「Internet Explorer 10」プレビュー版が公開 -
第49回
PC
RTM版も登場 Windows Home Server 2011の変更点とは -
第48回
PC
5秒で起動するSplashtop OSを自作パソコンで試す -
第47回
PC
ベンチで検証 Internet Explorer 9 RCの互換性と性能 -
第46回
PC
正式版の直前となるInternet Explorer 9 RC版が登場 -
第45回
PC
Silverlightをさらに進化させる「Silverlight 5」 -
第44回
PC
「Windows on ARM」が持つ意味と課題は何か? -
第43回
PC
GPUを利用できる仮想化ソフト XenClient 実践編 -
第42回
PC
複数のWindowsを使い分ける仮想化ソフト XenClient -
第41回
PC
3秒で起動しWindowsと共存するOS「Splashtop OS」 -
第40回
PC
最新版「PP7」に見るIE9の性能と互換性の高さ - この連載の一覧へ