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山谷剛史の「中国IT小話」 第78回

利用ユーザー8億人時代の中国携帯電話事情

2010年08月23日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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ネット利用はチャットやテキスト閲覧がメイン

携帯電話の販売店では音楽や映像ファイルをダウンロードするサービスも提供する

携帯電話の販売店では音楽や映像ファイルをダウンロードするサービスも提供する

 携帯電話によるインターネットの利用者は、CNNIC(中国インターネット情報センター)によれば、2010年6月末の時点で2億7600万人が利用しているという。

 利用用途、つまり「携帯電話で何をするか」だが、これについてCNNICと中国のリサーチ会社のiResearchそれぞれが、最新の状況を発表している。母集団が違うのか、iResearchのほうが「チャット」や「検索」など各項目でCNNICより10ポイント以上高いという結果にはなっている。

 とはいえ、どちらのリサーチ結果も「チャット」が最も多くの人々に利用され、続いて両調査報告とも「情報の検索」「ネット小説などテキストファイルの閲読」「掲示板の利用」「オンラインゲームの利用」「動画サイトの利用」となっている。「ケータイで音楽をダウンロード」も人気がありそうだが、CNNICの調査結果では「人気アリ」、iResearchの結果は「人気ナシ」と結果が2分した。

 男女別ではPCによるインターネット利用者は男女比がほぼイコールであるのに対し、携帯電話では男性比率が非常に高い。最も人気のチャットの牽引役はやはり「QQ」(関連記事)だが、それでも携帯電話でのQQ利用者は男性が圧倒的だ。

 また年齢層でもPCとの違いが顕著で、中国のPCによるインターネット利用者は35歳以下だが、携帯電話によるインターネットの利用者は高校生あたりから社会人になりたてのフレッシュマンほどの年齢層に集中している。チャット同様、SNSや掲示板などテキストベースのサービスは、携帯電話とPCを両方使いこなす人はそこそこいる。

 筆者自身、中国各地東西南北様々な地域へ所用で行っているが、やはりどこへ行っても人々はテキストベースのコンテンツばかり携帯電話で利用しているのが目立つ。ただこれについては女性の利用者もしばしば確認している。

携帯電話でネット小説を読む人は最近よく見かけるようになった

携帯電話でネット小説を読む人は最近よく見かけるようになった

 特にネット小説などのテキストファイルを、電子ブックリーダーでは読まず、携帯電話で読む人は最近実に増えたと実感している。中国図書商報社と電子ブック配信サイト「読※網」(※は口へんに巴)が4月に発表した「2009-2010中国電子ブック発展レポート」によれば、電子ブック利用者は1億100万人となったが、電子ブックリーダーによるコンテンツ市場は700万元(9500万円弱)であるのに対し、携帯電話によるコンテンツ市場は5760万元(約7億7000万円)と非常にパイが大きい。

 ゲームにしても、オンラインゲーム全盛の中国において、それ以上にネットを使わないスタンドアロンのゲームが携帯電話では人気だ。つまり1回だけダウンロードして、本体に保存した上で遊ぶわけだ。つまるところ、速度が遅いこと(ないしは速度が遅いと認識されていること)がテキストベース以外のサービスの普及を阻害している。

 中国の若者はどのように思っているか。日々携帯電話でインターネットを利用する人は「小説やQQなどを利用するもよし、情報を検索するもよし。ただしやり過ぎると目に悪い」と基本的に勧めるスタンスではある。ただしPCのみでインターネットを利用する人は「速度が遅く、たいしたこともできずお勧めできない」と速度を理由に挙げ、触らず嫌いとなっている傾向がある。中国の流行を牽引する力は、ネット以上に口コミの力が強い。

中国移動(チャイナモバイル)のキャリアショップ

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3Gをアピールするが、普及はまだまだ時間を要する

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 「ケータイでのネットは遅い」という概念を打ち破る3G携帯電話だが、中国のリサーチ会社「易観国際」(Analysys International)の発表によれば、今年上半期でWCDMA(中国聯通、チャイナユニコム)、CDMA 2000(中国電信、チャイナテレコム)、TD-SCDMA(中国移動、チャイナユニコム)の3規格・3キャリア合計で約1500万台が販売されたとのこと。とはいえ8億のケータイが使われている中での1500万台増は、まだまだ実生活の中では目に見えて3Gケータイユーザーが増えてきたとは言い難い。

通話料だけの本体無料ケータイが3Gでも続々登場

通話料だけの本体無料ケータイが3Gでも続々登場

 中国ではパケット定額制がないこともリッチコンテンツが敬遠される一因だろう。たとえば上海では、月額基本利用料が最も安い月66元(900円弱)でも、最も高い月586元(8000円弱)のプランでも定額ではなく、前者では300MB、後者では2GB以上利用するとそれ以上は1KBごとに0.004円加算という、半従量制である。

 ケータイでリッチコンテンツを楽しむ時代はまだまだ先ではなかろうか。

 

山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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