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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第13回

薄型スリムボディには楽しい機能が満載

ローディングが超早!  2.5万円のBDプレーヤー「BDP-S370」

2010年08月18日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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映像と音声のビットレート表示の両方に対応など
あなどれない実力を持つBD再生

BDP-S370のBDドライブ

BDP-S370のBDドライブ

 実売2万5000円ほどで手に入る安価なBDプレーヤーとしては、これまでに述べてきたユニークな機能の数々で十分に購入意欲を刺激されるし、画質・音質まではさすがに期待できないだろうという人も多いだろう。筆者もその1人だ。

 だが、画質・音質を含めて意外にもしっかりと出来ていたことに驚いた。スペック的な面を見ていくと、BDドライブはこれまでのBDプレーヤーにも搭載されていた「プレシジョンドライブHD」で、高精度な信号読み取りを実現している。

 DVDソフトなども最大1080/60pで出力でき、1080/24p出力も可能な「プレシジョンシネマHDアップスケール」やDeep Color、そして、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master AudioなどのHDオーディオのフルデコード対応と、最新プレーヤーの備えるべき機能はすべて盛り込まれている。

BDソフト再生時に「画面表示ボタン」を押すと、映像(下部)と音声(上部)にビットレートがリアルタイムで表示される

BDソフト再生時に「画面表示ボタン」を押すと、映像(下部)と音声(上部)にビットレートがリアルタイムで表示される

 再生を始めてみると、まず映像と音声のビットレート表示が可能。これができていたのは、これまではPS3だけではなかったかと記憶する。誰もが求める機能ではないのだが、高画質なBDソフトで映像のビットレートが50Mbpsを超えたりすると、なんだかうれしい気持ちになるし、HDオーディオの転送レートがわかるのも案外面白い(BD版「AKIRA」のドルビーTrueHD5.1ch 24ビット192kHz音声の転送レートを確認してみよう)。

 また、最近のBDレコーダーの長時間モードで録画したテレビ番組のビットレートの確認や、地デジやBSデジタル放送をダイレクト録画して、ビットレートを確認するなどのいやらしい使い方もできる。なくても支障はないが、あればあったでいろいろと楽しい機能なので、これをきちんと備えてくれたのはマニア的には高く評価したい。

画質モードは、「スタンダード」のほか「明るい部屋/暗い部屋」のプリセットメニューが選べる

画質モードは、「スタンダード」のほか「明るい部屋/暗い部屋」のプリセットメニューが選べる

画質設定では、3種(FNR:フレームノイズリダクション/BNR:ブロックノイズリダクション/MNR:MPEGノイズリダクション)のNRが選べる

画質設定では、3種(FNR:フレームノイズリダクション/BNR:ブロックノイズリダクション/MNR:MPEGノイズリダクション)のNRが選べる

それぞれのNRは切/1/2/3の4段階で効果を調整できる。調整値は「スタンダード/明るい部屋/暗い部屋」の3つで記憶させられる

それぞれのNRは「切/1/2/3」の4段階で効果を調整できる。調整値は「スタンダード/明るい部屋/暗い部屋」の3つで記憶できる

画音同期調整とは、いわゆるリップシンク。映像と音声のズレを微調整できる

画音同期調整とは、いわゆるリップシンク。映像と音声のズレを微調整できる

 その画質は、精細感で言うとわずかながらソフトに感じる低ノイズを重視した見やすい映像。ではあるのだが、「アバター」の2Dでも十分に立体感のある映像をしっかりと再現するし、CGで描かれたクリーチャーの質感などもきちんと描いている。

 正確に言うと、映像が甘いのではなく、スムーズで滑らか、きめ細かくしっとりとした映像と言える。白の輝きを際立たせたり、エッジを強調して精細さを演出するような「お化粧」も比較的控えめで、忠実度の高い再現となっている。

 この映像と比べると、PS3は情報量全開で信号をすべて出力するが、ノイズも目立って少々見づらいと感じるし、BDレコのDMR-BW970も元々の情報量は上回るが、多少コントラスト感やエッジの再現などに強調感を加えているとわかる。

 PS3との差は好みの差の範囲だし、トータルで言えばDMR-BW970の方が上だとは思うが、精細さや色の鮮やかさを強調してごまかしがちなこの価格帯のモデルとしては、かなり真面目に作り上げたものと言っていい。

 惜しい点があるとすれば、暗部は沈み気味でノイズ感こそ目立たないものの、暗いシーンでは黒側に引き込まれがちな点。コントラスト感は十分だが、このあたりはコスト的な差が出た。

 音質は、派手さを抑えた落ち着いたトーンで、中高域がクリアで聞きやすい。サラウンドの方向感などもわりと明瞭で、フロントスピーカーとリアスピーカーの間の定位感もしっかり出すような見通しの良い音場だ。ただし、音質的にはやはり少々力不足で、低音のエネルギー感が不足していたり、細かい音の再現がやや不足しがち。これはコストだけでなく、超薄型サイズのため、電源部などがやや非力な点なども影響しているだろう。

 トータルの印象としては、CGを駆使した超高解像度な最新作品よりも、フィルムで撮影された作品の方がフィルムらしい質感の豊かな映像を楽しめるので相性がいい。「イングロリアス・バスターズ」を見ても、遠景のシーンのレンズのボケ味もスムーズに再現するし、衣服や肌などの質感も自然だ。たとえば、12月に待望のBD版が発売される「風と共に去りぬ」などの名画では、フィルムならではの美しい映像を十分に堪能できそうだ。


この秋のソニーのBDは凄いかも!? そんな期待さえさせる意欲作

 ポップアップメニューでのチャプターサーチのアニメーション効果もスムーズで、メニュー操作で引っかかるような挙動がないなど、全体的な操作のレスポンスも優秀と、実力的には相当優れている。

 決して目立った高画質・高音質の特徴はないものの、ベースとなる実力の高さは価格を超えている。おそらくは、動作の高速化を含めて、基本的なシステムLSIが抜本的に新開発されたものと思われる。

 ならば、それを使った上級機の登場や同システムを使うであろうBDレコーダーの後継モデルの出来にも期待がかかる。薄型設計や高速出画&レスポンス、期待以上の画質・音質と、安価なプレーヤーとして本機はかなりの人気を集めると思うが、それ以上を求めるAVファンにとっても実に楽しみなモデルの登場と言えるだろう。


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