NECカシオ製端末の得意技
「アクセスポイントモード」を搭載
他方で興味深いのは、内蔵の無線LAN機能を生かし、ルーターとなって他の機器にネット接続を提供する「アクセスポイントモード」を備えていることだろう。「N-04B」など、最近のNEC製高機能携帯電話機の得意技となりつつあるものだが、N-08Bのそれも、他機種と同等の機能を持つ。NTTドコモのFOMA回線を、パソコンやゲーム機などでも無線LAN経由で利用できるのが利点で、N-08Bを含む今夏の新製品より、同時接続台数が4台に増えて、実用性が増した。
ただし、利用料金は通信料だけで月額1万395円(上限)と高めなので、イーモバイルやWiMAXなどの回線を使うモバイルルーターのサービスエリアで活動している人にとっては、少々魅力が薄く感じられるだろう。
なおN-08Bには、アクセスポイントモードと同じくNECのお家芸ともいえる機能が搭載されている。パソコンを遠隔操作するホームサーバーソリューションである「Lui」に対応し、「リモーター」と呼ばれるクライアント側となる機能が搭載されているのだ。
通常、Luiのサーバーマシンになれるのは、NEC製の対応パソコンのみだ。だがN-08Bの場合、サーバーソフトをNECカシオが無償公開しており、手持ちのパソコンにインストールすれば、どこからでもリモートアクセスができる。サーバー環境を手に入れるところまで含めると、もっとも安価なLui環境と言える。ただし、N-08BのLui機能は無償公開ソフトとの組み合わせでのみ動作し、現時点では既存のLuiサーバーとは互換性がない。
快適に両手でタイプできるサイズ感
キー配置には不満も
N-08Bの外観は、今時の言い方をすれば「フルキーボード搭載スマートフォン」だが、筆者のように昔からモバイル機器を使っている者が見ると、まさに「復活のモバイルギア」であり「3G世代のsigmarion」である。思えば、どちらも製造・開発はNECであり、N-08Bとの共通項も多いように感じる。
N-08Bの横幅は180mmと、携帯電話としてはかなり大柄だ。そのため、キーピッチも多少大きめで、約12.7mmとなっている。
このサイズは、卓上に置いて両手でタイプするならば「ギリギリ」という感じである。ちなみにIS01やLYNXは横幅148mm。その差はたかだか32mmでしかないのだが、両手でタイプしてみると違いはかなり大きい。
筆者の手は成年男性としては標準的なサイズである。それでも、LYNXなどは両手の親指・人差し指・中指までを使うのが精一杯。どちらかといえば、両手で持っての「親指打ち」の方が快適と感じる。
それに対しN-08Bは、だいぶ打ちやすく快適だ。パソコンのように小指まで使うタイピングはやはり無理で、LYNXと同じく中指くらいまでだろう。しかし、あきらかに窮屈さを感じにくく、卓上でのタイプはしやすくなっている。他方で、32mmの広さが災いしてか、親指打ちはかなりつらく感じる。
キータッチは悪くない。キーに使われているパーツはよく、キートップのぐらつきもない。ただ筆者の好みとはちょっと違い、押し下げ感が柔らかくて腰がない印象だ。筆者はタイピングには独特の快感があると思っているのだが、それが欠けている。LYNXはキーの小ささがマイナスで快適とは言い難いのだが、ことタイプの感触だけで比較するならば、こちらの方が「快感」を感じる。
キー配列からは、「できる限りパソコンに合わせよう」とする意図がくみ取れる。変換系のキーが独立しているのはそのためだろう。各キーのサイズはおおむね同じで、極端に小さなキーはなく、端のキーも押しやすい。Enterキーが縦方向に倍のサイズになっていて、この点は入力中、何度も快適さを感じたポイントである。
逆にイライラさせられたのは、[BS]キーと「ー」の位置だ。後者は、たまたま筆者が利用中にIT系の文章(この原稿を含む、仕事上のテキスト)を入力することが多く、それらに「ー」を含むカタカナ語が多かったためかもしれない。だがBSキーについては、多くの人が戸惑うのではないだろうか。最上段右上(0の右横)に配置されていて、物理的な距離はたいしたことはないはずなのだが、タイプ中の感覚でいえば「はるか遠く」にあるように感じられた。
電話としてのアイデンティティーでもある「終話」キーがその横に独立して配置されているわけだが、試用中は何度も「終話とBSが逆ならば……」と思った。また、カーソルキーと他のキーに配列的な区別がほとんどないので、[←]キーや[↑]キーを押す際、ミスタッチが多いと感じた。
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