このページの本文へ

まつもとあつしの「メディア維新を行く」第10回

「すべてをコントロール下に置くオープン戦略」が主流に

激震ネットメディア。その現状を俯瞰する

2010年08月13日 09時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

メディア事業者同士の連携が進んでいる

現在のYahoo!JAPANトップページ。広告枠は飽和状態だ

 私たちはどうしても、新旧対立のような構図でニュースを捉えがちだ。記事を書く立場でも、そう煽った方が刺激的だし、アクセスを稼げることも多いから無理矢理対立軸を持ってきたりもする。だが、今回のような出来事をそのように捉えると本質を見誤ると言えるだろう。

 ヤフーについて少しさかのぼって考えてみよう。2007年に「オープン化構想」をヤフーはスタートさせている。筆者もそのCP(コンテンツプロバイダー)向け説明会に参加していた。

 それまでヤフーは、コンテンツを自身のドメインに抱え込むことで巨大なトラフィックを稼ぎ出してきた。たとえばヤフーニュースは、ニュース提供会社から記事の配信を受け、その記事へのトラフィックによって生まれた広告収入の一部を提供会社に支払うという仕組みだ。

 だが、この方法には限界がある。Yahoo!JAPANのサイトを見れば分かるように、広告を表示できるエリアにはほぼ広告を出し尽くしている。またトップページを見ても、コンテンツの網羅性はもうこれ以上何も入らないかのように感じるところまで来ている。


トラフィックと売上げを交換

 そこで、打ち出して来たのが「オープン化構想(メディアネットワーク)」だ。つまり、外部サイトへもトラフィック誘導(送客)する代わりに、その先の外部サービスでの売上げを逆にヤフーが受け取る、という仕組みを備えたのだった。また、その際、CPが求めれば課金システム「ヤフーウォレット」も採用することができる。

 たとえば、オープンネットワークの共同広告展開をすぐに行なった毎日新聞やmixi、オンラインゲームのハンゲームに対するインタレストマッチ(関心連動型)の広告提供など、さまざまな事例が生まれている。

 こうすれば、ヤフーは自分のメディア内のスペースの制約を超えて、さらに売上げを拡大することができるというわけだ。一方、限られたスペースに自社のコンテンツを採用してもらうことが難しかったCP(コンテンツプロバイダー)側も、自分たちのメディアでその展開を自由に行なえる。

 実際、ヤフーはこの仕組みを積極的に営業することで売上げを伸ばすことに成功している。Googleが基本的にはシステムで自動的にコンテンツを集める方針なのに対して、ヤフーではフェイスtoフェイスでCPとのアライアンスを実現してきたのも大きな相違点だ。

 つまり、この例に示されるように、巨大なサイトは、その成長の糊代(のりしろ)を、ほかのサイト・サービスに求め始めている。その結果、ハブとなるサイト(ポータルサイト)とその周辺に連なるサイトによるネットワークが形成されているのが、ネットメディアの現状だ。


ソーシャルメディアと連携するポータル

 その状況を頭において、前述の川邊氏の発言、そして6月に報じられたソフトバンクとソーシャルゲーム最大手Zyngaの資本提携、そしてその後のZyngaによるウノウ(やはり国内ソーシャルゲーム大手)の買収、といった一連の流れを捉えると、ポータルサイトがソーシャルサービスと対立するのではなく、連携を図ろうとしている姿がイメージできるはずだ。

 ユーザーの立場から見ると、テレビ・新聞などのマスメディアとネットメディアの関係にも似る。ジェネラルな情報はマス側で入手し、ソーシャルな場でそれを共有し、咀嚼する……紙やテレビからネットへ、といったデバイスの跳躍が発生しない分、ネット上でのメディア同士の連携は技術的には容易だ。

 実際、ソーシャルサイト側では、連携の仕組みは当たり前のように備えている。

 TwitterはAPIを開放し、さまざまなクライアントや関連サービスが数多く生まれている。最もうまくTwitterを取り込んだのが全世界で5億人のユーザーを抱えるまでに成長したFacebookだ。

Facebookのホーム画面。Twitterを始めとしたソーシャルサービスの更新情報が並ぶ

 ソーシャルサービスのトレンドとしては、すでに自社サービスにユーザーを囲い込むのではなく、多種多様なサービスと連携する方向に進んでいる。

 Googleの提供する強力な検索機能、そしてSNSやTwitterブームによって、いったんはその存在意義が薄まったかにも見えたポータルサイトだが、ヤフーが進めるようなオープン戦略と、ソーシャルサービスが選択するマッシュアップという手法はもともと相性が良く、対立するものではないのだ。

 そう考えていくと、ひとつの未来予想としては、ソーシャルサービスから得られるフロー情報と、ジェネラルであったりストック的な情報(ブログなど)を選別提供するポータルサイトがネットメディアの総合水先案内人として、本来の機能を再び果たす時期が来たとは言えないだろうか?

 たとえば、あくまで想像とはなるが、ヤフーニュースを読み、それをTwitterでつぶやくといったリアルタイムサービスとの連動、ヤフープレミアム会員がゲームなどのソーシャルアプリをシームレスに使えるようになる、検索結果にFacebookのフレンド情報が表示される、といった具合だ。

 Googleだけでは満足できなかった検索結果が得られる可能性が高まったと言い換えることもできる。

 わかり易い例を挙げると、ニュースを自動収集するGoogleニュースでは大手新聞社の情報は検索結果にヒットしなかった。大手各社が参加を拒んだからだ。だが、前述のように新聞社とのビジネスモデルを確立させているヤフーであれば、そういったコンテンツも検索結果として提供できる。

この連載の記事
最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ