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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第33回

あなたの声で歌うソフト「UTAU」の奇妙な世界

2010年08月14日 12時00分更新

文● 四本淑三

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UTAUを使う人が進化している

―― 現在のUTAUの開発ステータスはどのへんですか。

飴屋 現在の、というか開発の初期からなんですが、ストレッチングとピッチシフトで波形が歪み、ノイズが入る問題があるんです。改善はしているのですが、これは今も研究しています。それからUTAUの機能というよりUTAUの使い方のウエイトが大きいんですが、もっとリアルな歌唱を作成するにはどうしたら良いか?みたいなことも課題になっています。もちろんUTAUの機能として組み込めるなら組み込んで行きたいと思っていますが。

―― VOCALOIDとの技術的な違いは何ですか。

飴屋 あれは特性を抽出して合成し直すということをしているので、UTAUとは全然違います。UTAUはあくまで原音の伸縮でやっているので。ただ、音質を良くする技術には似たようなものがあると思うんです。出発点は違っても似たようなゴールに向かっちゃうんですね。

有志によるWikiメディアが情報源となっている

―― それは面白いですね。

飴屋 音声合成の面白さは、一つの答えがないことなんですね。人間の声は多様だし、今のアプローチが唯一の答えかどうかは分からない。だからのめり込むと面白いんです、この分野は。

―― 音関係は出音さえ良ければそれが正解ですからね。

飴屋 そうそう。変なところで工夫が必要なんですよ。理論ではこれが正しい、すごいでしょってやるんだけど、理論で作ってみてもいい音にはならない。理論と全然関係ないことが必要だったりするんです。

―― シンセを設計している人達も同じことを言いますね。理論的に正しいことと音は別だって。

飴屋 だから研究者と企業の開発ではまったく別のことをやっていると思います、私の印象では。VOCALOIDは音声合成の世界では「なんでこんな旧い技術でやってるの?」っていう印象だと思うんですが。

―― UTAUも徐々に良くなっていると思うのですが。

飴屋 それはUTAUを使う人が進化しているんですよ。設定や録音のコツを分かっている人がポチポチ出てきた。本体はあまり進歩していないんですね。技術が旧いんであまりやることがないんですよ。音質改善の地道な改良だけですね。

―― ただ急に良くなりましたよね、最近。

飴屋 連続音が登場したのは革命でしたね。あれを最初に提案したのは耳ロボPでした。遷移音を入れたほうがリアルになるんじゃないかと。それで藤本萌々子さんと実験しながら作ってみたんですが。あれはUTAU本体よりもユーザー側の工夫と言えるものなんです。UTAU側はもともとあった設定を使いやすくしたに過ぎない。

藤本萌々子 : UTAUの有名な音源「桃音モモ」の中の人



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