ストリートビューで立体的な理解が可能に
それまで上空から見た平面の地図だった「Google マップ」は、2008年8月からストリートビューを開始したことで立体的に利用できるようになったのも大きな進化だった。このストリートビューでは、従来は自動車を使って道路を撮影してきたが、自転車を使って敷地内を撮影する新たなサービスも提供。3月に京都府・高台寺で撮影したものが国内では最初の事例だが、ここにユーザーが投稿した位置情報付きの画像を重ね合わせることで、「より立体的に、重層的に理解を深めることができる」(同)。
米GoogleのGoogle Maps製品管理担当副社長であるジョン・ハンケ氏は、同氏のチームにおける思い出をいくつか挙げる。1つは、米ニューオリンズ州を襲ったハリケーン・カトリーナの際に、Google MapsとGoogle Earthに最新の被害地の状況を配信し続けたことだという。このとき、救急ヘリコプターのパイロットがこの情報を使って孤立した被災者を救出。「より多くの人を救出できた」との感謝のボイスメールを受け取ったそうだ。
この最新の情報を配信するという試みは、今後の「Google マップ」の方向性にもなっている。「世界は常に変化している」とハンケ氏。例えばメキシコ湾原油流出事故での状況を配信するような、世界で何が起きているかを配信したり、雨や雪といった天気の状況をアニメーションで表示したり、「リアルタイムなものにして、最新の情報が得られるようにする」(ハンケ氏)ことが目標だという。
ほかの思い出としてハンケ氏が挙げたのはマッシュアップで、その端緒となったのは、ユーザーが「Google マップ」を使って住宅情報を独自に提供したサービスだった。最初はグーグルの許可を得ないで行なわれたものだったが、今ではマッシュアップとして30万以上が提供されるようになった。
ストリートビューのスタートも大きな思い出だというハンケ氏。「ストリートビューではいろいろな議論が巻き起こり、難しい面もあったが、いろいろな意見に耳を傾け、最良の形で各国で提供できるようにしている」とハンケ氏はいう。日本の二条城や英ストーンヘンジなど、世界の史跡などをストリートビューで提供したことも強く印象に残っているそうだ。
グーグルは、世界中のすべての場所についての詳細情報をプレイスページとして集めることを目標にしており、ハンケ氏は「世界に68億人の人間がいて、知っておくべき重要な場所は少なく見積もっても10億はある」と指摘。現在、「Google マップ」上には1億の場所の情報しかなく、この地図情報をさらに集めるために、ユーザーが地図のベースとなるレイヤーを作成できる「Google マップメーカー」を提供。毎日、190ヵ国以上の数千ユーザーが地図情報を作成しているそうだ。
店舗内の写真を閲覧できるサービスも準備
さらに、ストリートビューの進化版として、店舗内の写真を撮影して「Google マップ」で閲覧できるサービスも準備しており、日米豪の3カ国で撮影をスタートさせている。
5年間の一区切りとして正式版に移行した「Google マップ」だが、「将来に向けての機能強化の作業をしている」(ハンケ氏)ということで、今後もさらなる進化を遂げそうだ。