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「対GoogleのSEOもやる」Yahoo! JAPAN提携の中身 (2/2)

2010年08月03日 15時38分更新

文●小橋川誠己/Web Professional編集部

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「成長の道具としてGoogleを採用」「Google向けのSEOもやる」

 「今までとこんなに変わらないのに、なぜ興味を持ってもらえるのか」という井上社長だが、会場に詰めかけた報道陣の関心は高く、活発な質疑応答が繰り広げられた。主なやり取りを以下にまとめた。


■提携について

――Yahoo! JAPANにとって検索ビジネスの重要度は?

井上雅博社長 Yahoo! JAPANの売上げの半分は広告。その半分ぐらいが検索連動型広告なので大きなビジネスだ。今後、ディスプレイ広告とインタレストマッチが伸びれば比率は下がるだろうが、いずれにしても重要なビジネスであることに変わりはない。

――前回(2001年~2004年)のGoogleとの提携と今回の違いは?

井上社長 今回は検索連動型広告のシステムが含まれている。日本で検索連動型広告が始まったのは2004年からで、以前の提携では検索エンジンの利用のみだった。

――検索エンジンをGoogleに切り替えた理由、選択の決め手は?

井上社長 米ヤフーがYST(Yahoo! Search Technology)の開発中止を決め、今後の性能の向上が望めなくなった。ITの世界は止まっていてはダメで、常によくなっていかないと競争に勝てない。今後、Yahoo! JAPANが成長していくために、何を道具として使うのが正しいのか考え、現時点ではGoogleがベストと判断した。現時点での技術、実績に加えて、将来における力の入れ具合なども考慮した。

梶川 朗取締役CFO 現在のYahoo! JAPANとGoogleの検索結果の精度には大差がなく、本当はYSTの開発を継続してほしかった。米ヤフーはYSTのメンテナンスをしばらく継続するとしているが、消え行くものにどの程度力を割いてくれるのか、やはり不透明だ。選択肢がそもそも少ない中、現時点でGoogleほど実績のある検索エンジンはない。

――自前での検索エンジンの開発は検討しなかったのか?

井上社長 米ヤフーは世界数十カ国で検索エンジンと広告システムのビジネスを展開しているが、それほどの規模で売上げを集めても投資効率が悪いとされている。日本で、国内市場だけをターゲットにして検索エンジンを開発するのでは採算が合わない。

――Googleに対するデータ提供で、オークションやショッピングなどポータルとしてのYahoo! JAPANへの流入が増える可能性もある。Googleの集客力への期待は?

井上社長 今回の契約ではYahoo! JAPANはGoogleに対してさまざまなデータは提供するが、提供したデータを優先的に検索結果に表示するような内容ではない。したがって我々も(Google向けに)正しいSEOはきちんとやり、検索結果の上位表示を目指すことで(ポータルとしての)ビジネスの拡大につながればいい。


■検索結果について

――検索結果ページはGoogleと同じになるのか?

井上社長 Yahoo! JAPANの検索結果ページはWeb検索の結果だけでなく、ローカル情報などのさまざまな情報を一緒に表示しており、Googleから提供を受けるデータが表示されるスペースは半分から3分の1程度だ。それ以外はYahoo! JAPANがコントロールする。また、Googleからデータ提供を受ける部分についても、不適切な結果が含まれている場合はYahoo! JAPAN側で検索結果から除外することもあるかもしれない。いずれにしても、検索結果ページに占める“Web検索以外の割合”は年々増えており、見た目は(Googleとは)相当違うものになるだろう。

――Web検索の結果はどの程度チューニングするのか?

井上社長 最初はおそらくGoogleとまったく同じになるだろう。少し時間をかけて評価し、その後、調整することになる。米国版のYahoo!とYahoo! JAPANの検索結果を比べてもらえれば、Yahoo! JAPANがどのような手を加えているのか分かるはず。Googleへの切り替えでも同じようになると考えている。


■検索連動型広告について

――広告主やコンテンツプロバイダーにとって今回の提携にメリット、デメリットはあるか?

井上社長 メリットもデメリットもない。サービスの裏側のシステムが変わるだけで、ビジネス上の条件や掲載ルールなどはまったく変わらない。広告主から見れば裏側がどんなシステムでも大きな影響はないはずだ。

――スポンサードサーチとAdWordsの機能には違いがある。AdWrodsに合わせるのか?

井上社長 基本的にはこれまで(のスポンサードサーチ)と同じ機能を提供したい。ただ、どの機能を残すのか、細かい部分までは決まっていない。現状のAdWordsにはないが必要な機能があれば、移行前にGoogle側に追加してもらうことになるだろう。

――スポンサードサーチとAdWordsは文字数などの細かい点でもだいぶ違う。

井上社長 文字数なども含めて基本的には変えるつもりはない。ただ技術的な理由でどうしてもできない場合は変えざるを得ないかもしれない。


■マイクロソフトとの関係、独占批判について

――事前に公正取引委員会に対して相談済みとのことだが、どれぐらい前からどのように説明しているのか?

井上社長 かなり詳しく説明している。Googleも公正取引委員会に対して(Yahoo! JAPANとは)別に説明し、必要に応じて両社でも説明している。

梶川CFO 公正取引委員会への相談は数か月前から。

――マイクロソフトとの関係は今後どうなるのか? 検索以外の分野でも両社の関係は深い。

井上社長 まず今回の提携について、「マイクロソフトが嫌いだから除外した」ということはない。当然ながら(マイクロソフトの)Bingも含めて、総合的に判断した。ITの世界はいろんなことが起こるから将来は分からない。その都度、柔軟に検討したい。検索以外でのマイクロソフトとの取り組みは継続したい。

――米マイクロソフトは公正取引委員会に「競争阻害の申し立てをする」「証拠を出す」と主張しているが?

梶川CFO 独自に検索エンジンシステムを開発して所有していた米ヤフーと、Yahoo! JAPANのようにシステムを持ってない会社とでは事情が違う。Yahoo! JAPANは以前もGoogleやgooの検索エンジンを利用してきた。自前のエンジンを持っていない会社が他社のエンジンを使う話と、エンジンを持っている会社が統合する話は違うと思う。

井上社長 まだ始まっていないものに対して「証拠を出す」と言われても困る。

――Bing日本版に対して提供しているスポンサードサーチはどうなるのか?

井上社長 我々としてはぜひ継続したいと思っているが、マイクロソフトが判断すること。


■その他サービスについて

――「ビジネスエクスプレス」は継続するのか?

井上社長 特にやめる予定はないが、まだそこまで議論していない。今後検討したい。

――昨年末に始まったばかりの「検索プラグイン」(SearchMonkey)の展開は?

井上社長 Googleの検索エンジン上で継続して提供できるようにしたいが、確定ではない。技術的に実現可能かどうか今後詳細を詰めるつもりだ。

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