Adobe InDesignからEPUBを生成する
ここまではSigilやAcrobatなどのツールを使って電子書籍のデータを作成してきましたが、実際に本を作成する現場で使われているのはアドビ システムズの「InDesign」というDTPアプリケーションです。現在、日本で発売されている雑誌/書籍のほとんどはInDesignで制作されています。
- ・Adobe InDesign CS5
- http://www.adobe.com/jp/products/indesign/
ここではInDesign CS5を使ってEPUB形式のデータを作成してみましょう。今回はテキストのみで、書体やサイズなども指定しない、シンプルなデータを作ってみます。
まず、InDesignで新規ドキュメントを作成します。EPUBの場合、文字数や表示幅、ページ数などは電子書籍リーダーによって変わるので細かく指定する必要はありません。ページ数は「1」を指定しておきましょう。
次に、テキストデータを流し込みます。ファイルメニューから配置を選択し、ファイル名を指定したらページ上でShiftキーを押しながらクリックします。するとすべてのテキストが自動的に流し込まれます。
今回は画像や図版はなく、文字のサイズや色も調整しないので、以上でInDesignデータはできあがりです。ちなみにマスターページに背景色や文字、画像を指定してもEPUBでは反映されません。また、複数のテキストフレームを作成してレイアウトした場合、意図しない順番でデータが生成されるため、1つのテキストフレームで完結するように作成してください。
それではEPUB形式に書き出してみます。InDesign CS3/ CS4/CS5それぞれメニュー項目が異なりますので、お使いのバージョンに合わせて参考にしてください。
生成されたEPUBファイルは、アドビの電子書籍リーダー「Adobe Digital Editions」やiPadで表示を確認できます。
なお、InDesign CS3/CS4で書き出したEPUBデータはAdobe Digital Editionsで表示すると日本語が文字化けします。著者のサイトで修正方法を解説していますので参照してください。
- 新規にInDesignで電子書籍データ(ePub形式)を作成する場合
- http://www.openspc2.org/eBook/InDesign/basic/0002/index.html
◆
実際に試してみると分かるとおり、今回のように文字だけの電子書籍データを作るのは実はあまり難しくありません。とにかく「作ること」を優先し、段組、書体や行間など、細かい調整を一切していないためです。特に、EPUBではWebの技術(スタイルシート)を使って調整を加えることで、読みやすさを表現します。今後の連載の中で、スタイルシートを使った調整方法にも触れていきましょう。
次回は画像を含む電子書籍データを作成します。
InDesignだけで電子書籍を制作する
InDesignでせっかくきれいにレイアウトや文字組みをしても、EPUBやAZW/MOBIなどのほとんどの電子書籍フォーマットでは反映されません。現在出回っている書籍を電子書籍で同じように再現したいとすると、PDF形式を選択するか、すべて画像化するしかありません。
このため、現状では紙のデータと電子書籍のデータは別々に作成する必要があります。電子書籍ではなぜか安価な値付けが求められますが、制作コストはその分、上がってしまうのです。
もしInDesign上ですべてのフォーマットに変換できれば、制作現場の負担は軽減され、コストも抑えられるでしょう。InDesignはCS3以降、EPUB形式を出力できますし、電子雑誌版の「TIME」はInDesign+inWoodWingで作成されています。今後は電子書籍データやアプリに変換するInDesignのプラグインが充実してくるかもしれません。
- ・WoodWing / TIME Magazine
- http://www.youtube.com/watch?v=G_oBpaMuCvc