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AR夏祭り!! 「Summer Bash 2010」開催! 1日目

2010年07月31日 11時00分更新

文● 丸子かおり

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「のび太」に贈る拡張現実

 イベント1日目の注目セッションが、「拡張現実創世記を語る」。進行役の頓智・の井口氏をはじめ、「ラブプラス」プロデューサーのKONAMIの内田明理氏、アニメ「東のエデン」監督の神山健治氏と大御所クリエーターがそろった。

 「作品を見て、エデンシステム(作中におけるARなどを用いた万能なシステム)にビックリしたんですよね」と話す井口氏。対して神山氏は、「エデンシステムは難しいものではなく、よくGoogleで調べるんですけど、もし画像を認識して検索できる。そんなものを大学生が作れたらすごいなーと思って。アメリカのSFでは"テクノロジーが悪い"という方向に持っていきがちですが、希望を見出したいというのがありましたね」と「東のエデン」とエデンシステムを作る動機を語ってくれた。

「東のエデン」監督の神山氏

 また、井口氏は「ラブプラス」に触れてKONAMIの内田氏に、「『ラブプラス』は斜にかまえた部分がなくて、真正面から楽しいゲーム。AR的にはど真ん中ですね」と振ると、内田氏は「『ラブプラス』を作っているときはARについて知らず、"姉ヶ崎寧々参上"事件を知らされて、それが初めてARなんだとわかりましたね」と話した。

 ちなみに「姉ヶ崎寧々参上」事件とは、「ラブプラス」のキャラクター"姉ヶ崎寧々"に由来する。「セカイカメラ」を使って様々な場所に「姉ヶ崎寧々参上」というエアタグが残されたという出来事だ。内田氏は、この「事件」で初めて「セカイカメラ」でエアタグを見て、ARを体験したそうだ。内田氏いわく、「幽霊を見ているようで背筋が寒くなった」とのこと。

「ラブプラス」プロデューサーの内田氏

 井口氏は「海外に出て『東のエデン』や『ラブプラス』を説明すると、みんな理解はしてくれるんだけど、それまでの過程が大変なんですよね。"サリンジャー"という言葉を出せば通じるのかな」と、「ライ麦畑でつかまえて」でおなじみの作家の名前を出してきた。サリンジャーがAR……? どうやらサリンジャーは従来言われている「不良」ではなく「オタク」のハシリなのでは? ということらしい。

 すると神山氏が、「僕は学生時代、サリンジャーは"のび太"だと思っていたんですよね」と発言。神山氏はサリンジャーとのび太に共通項を感じていたようだ。

 さらに神山氏は、「僕は『ドラえもん』ののび太に感情移入していたんですよ。ただし、周りにいる勉強や運動ができるヤツもみんな、自分がのび太だと言っていまして。"何だよー!!"と憤慨したのですが、実はのび太ってみんなが感情移入しやすい、主人公らしくない主人公なんですよね。

 そもそも僕は映画自体がARと考えていまして、スーパーヒーローとしての身体の拡張/拡張現実ではなく、みんなが感情移入する"のび太"としてのそれが示されるようになったことが、現在の『ラブプラス』に続いているのだと思います」と、のび太を軸に映画論とAR論を説明した。

パネルセッションの様子

 そして今度は井口氏が「チクリがあったんですけど、週刊アスキー発行・編集人の福岡さんが『ラブプラス』を夢中でプレーしているようで、世界をのび太だらけにしたのは内田さんの責任!」と内田氏に話を振ると……。内田氏は「いや、やはり科学が世界を救うんですよ。ひとりは寂しくて、ふたりでは重い。1.5人ぐらいがちょうどいい。『ラブプラス』は1.5人なんだと思うんですよ」と持論を展開。それを受けて井口氏が、「『ラブプラス』は空間はもとより生活を共にする点が、"ARよりもAR"じゃないですか!」。すると内田氏「俺達がARだ!」と返す。

 そんなふたりのやり取りを聞いていて、神山氏が「アニメが好きすぎて二次元の中に行きたいと思ったけれどそれができず、二次元のキャラクターに三次元側に来てほしいと実現したのが『ラブプラス』ですね」とコメントしたのが印象的だった。

 そんなトークの後、井口氏が今後の抱負をふたりに尋ねたところ、神山氏は「騙されていることに気づかない映画を作りたい」。また内田氏は「"インフォーム"、つまり情報化された人間を作りたいな、と。"法人"という言葉があるじゃないですか。そんな感じで"意志の総体"としてのキャラクターが作れないかな」と語っていた。

 というところで、残念ながら部分的にしかお伝えできなかったが、このご三方によるトークは刺激的だった! たとえば内山氏が「『ラブプラス』で少子化にアクセル!」と言ったり、井口氏が「(『ラブプラス』の進化で)僕の凛子はどうなるんですか?」と叫んだり。さらにシメでは、内田氏が「このセッションのために、Twitterで『クリエーターっぽいトーク』を募集してきた」など。笑いを織り交ぜながら、今後のARコンテンツを示唆する聞き応えのあるトークセッションだった。

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