価値を伝える前に「価値観の共有」という土台を作る
自社サイトで商品やサービスを紹介するときも「それが良いものだ」と理解してもらうためには、「価値観の共有」という土台作りから始める必要があります。
まったくの新しいカテゴリーの商品であれば、ゼロからの価値観を作らねばなりません。今では当たり前のことですが、ソニーはウォークマンで「自分の好きな音楽を持ち歩く」という新たな文化=価値観を作りました。この価値観が受け入れられたからこそヒット商品になり、今に続くライフスタイルの1つになっているのです。価値観の共有できなければ、ウォークマンは録音できない、単なる音楽を聴く機械として終わっていたと思います。
既存の商品に新たな付加価値を付け浸透させたケースもあります。たとえばJ-PHONE(現ソフトバンクモバイル)はカメラを装備した携帯電話を出したとき「写メール」という言葉を作りました。当初は「携帯電話にカメラなんか要らない」という声も聞かれましたが、今では旅先から友人や家族に楽しい出来事を写真とメッセージで伝えることも日常のコミュニケーションになっています。これも価値観の共有ができたからユーザーに浸透したのです。
これらは新たな価値観の提唱の例ですが、多くの既存製品でも同じことができます。
たとえば万年筆も1000円のものもあれば10万円の高価なものもあります。機能だけに目を向ければ、どちらも「文字を書く」点では同じです。しかし高価な万年筆のほうが、手に持つ感触、キャップをはめるときの品質、紙の上をなぞる書き心地などが違うはずです。メーカーごとに違う特徴もあるでしょう。
万年筆に詳しい人なら感触、品質、書き心地などのさまざまな情報を持っている(これも価値観の共有)でしょうが、詳しくない人に「10万円の万年筆の価値」を理解してもらうのは大変です。
しかしユーザーの価値観を育てることにつながるコンテンツを用意できれば、詳しくない人にも10万円の万年筆の価値を理解してもらえるでしょう。つまりこの10万円の万年筆の価値の解る人を増やせば、市場も広がるはずです。
このように商品の価値は、価値観の共有があってこそ、人に伝播していくのです。だから私は、商品の持つ価値が伝播しやすいように、「価値観の共有」をまず意識してサイト構成を考えるようにしています。価値観の共有が構築できれば、企業にとっては自社商品の価値が伝わりやすくなりますし、ユーザーにとっても興味を持って想像力を働かせながら情報を得られるようになります。