日本語入力ソフトの定番といえば、(株)ジャストシステムの「ATOK」だ。発売されたばかりの新バージョン「ATOK 2010 for Mac」について、ITジャーナリストの林 信行氏に話を聞いた。
「ATOK 2010」は丸いタイヤに生まれ変わった
最初に感じたのは動作速度の向上です。僕がATOKのように基本機能の成熟したソフトに求めるのは、機能よりも質。iPhoneやiPadの影響でMacを触る機会が少なくなっていますが、原稿執筆など長文を打つ作業は当然Macです。このとき日本語入力ソフトの動作が遅いと、それだけで不快になりますよね。今回の新バージョンでは、ユーザーが変換処理を意識しないレベルの動作速度に達したと思います。
これまでの日本語入力ソフトは、自転車のタイヤに例えると八角形。がんばって走ろうとすれば前には進むけれど、丸いタイヤの快適さを知ってしまうともう元には戻れない。たとえ八角形タイヤの自転車に高性能のLEDライトやスピードメーターといった機能が付いても、その考えは変わらない。つまりATOK 2010は、丸いタイヤに生まれ変わったというところでしょうか。
また電子辞典ウィンドウなどをCocoa化して、主張しすぎない落ち着いたデザインになったのも評価できます。これにより、ソフト全体の質が高まったという印象を持ちました。
「連想変換」でアイデアを導き出す
新機能ではありませんが、原稿が行き詰まったときに「連想変換」から刺激をもらうことが多いですね。特定キーワードの連想変換候補とその意味を眺めていると、新しいアイデアが浮かぶことがあるんですよ。具体的には、ひとつの言葉を多角的に見つめることで、新しい話の展開を得ることができる。ちょっとした気分転換や発想の飛躍に使える、僕にとっては素晴らしい秘密兵器ですね。
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