オトバンクから、APPストアで7月19日に発売される「朗読少女」の発表会が、六本木の東京ミッドタウンで行なわれた。iPhone・iPad用のアプリケーションで、同社の配布する電子書籍をキャラクターが読み上げてくれるというもの。リリース開始時からストアで販売可能なコンテンツは、「羅生門」、「よだかの星」、「ごんぎつね」の3作品。今後は毎月3~4タイトルを増やす予定となっている。また、「朗読少女 羅生門LITE」が、期間限定で無料ダウンロードできるので、まず体験してみると良いだろう。ちなみに有料版の価格は、“朗読少女”アプリとコンテンツがセットになったものが450円、コンテンツのみを追加する場合は350円。
電子書籍を読み上げる際に、コンテンツに合わせて背景イラストが場面ごとに変わっていく。そのほか、キャラクターをタップすると反応したり、読み上げ中にタップすると選択肢が出てきて、選択により好感度が上下するといったゲーム要素もある。好感度が上がると、セクハラをしても嫌がらなくなるという。
また、ストアボタンを押すと、書籍データのほか、コスチュームやしおりへのプレゼントを購入することも可能。別キャラクターの販売も検討しているそうだ。
津田×遠藤パネルディスカッション
「朗読少女」機能解説に続いて、第二部はITジャーナリストの津田大介氏がオペレーターとなり、オトバンクの上田氏、弊社アスキー総合研究所所長の遠藤諭による「電子書籍の未来」という題でパネルディスカッションが行なわれた。
上田氏、遠藤、津田氏の順で、資料を元に“電子書籍の形態”や“電子書籍についての認識”“アプリ版電子書籍の可能性”について発表が行われた。発表の概要は画像を見ていただくことで省略させていただき、ディスカッションの内容について触れておきたい。
津田氏から遠藤へ「電子書籍が、既存の書籍をどこまで駆逐するのか、バッティングするのか?」という問いかけが行なわれ、遠藤は「時間の軸を無視すると、いずれはかならず電子化すると思います。しかし、電子化に移行する時期を間違えるといいことはないんじゃないかと思っています。とはいえ、いずれは電子化するので、trial and errorを繰り返したほうがいいと思っています。ローリスクでできるのが電子書籍のよいところですから」と話した。 続いて、上田氏に「“朗読少女”が既存の出版社と協業する際の具体的な利点はどんなところにあるか」という問いかけをされると上田氏は「オーディオブックは6000タイトル以上行っている弊社としては、乙葉しおりが本を読み上げるという形で、読書を習慣としていない本ライトユーザーという新しい読者層を広げるという点と、読み上げられたことで興味を持ち、書籍を購入するというプロモーション効果があるのではないかと考えています」と話した。すると津田氏から「本ライトユーザーという概念が面白いですね。これまで取りこぼしていた層が従来の読書文化にあって、そこを繋ぐ役割になるかもしれないですね」と話した。
その後も書籍を取り巻く環境や今後の展望やあり方、新しい読書スタイルに関するディスカッションが行なわれ、最後に「本当に内容の良い本は、手にとってもらえば勝ちなので、手にとってもらえるための方法として、これまでにリーチできていなかった層にどうやって届けるのか。そして出版社、編集者は、本来あるべく姿の本当に長く残っていく質の高いコンテンツを作ることが、新しい形で本の存在を知る人が増える中で求められていくだろう」といった形でまとめられた。
実演“朗読少女”
第2部のパネルディスカッションの硬い雰囲気から一変、朗読少女のキャラクター「乙葉しおり」を担当した、ささきのぞみさんが初期配信タイトル「羅生門」の一説を朗読した。
朗読する前に「私は妹が下に3人いまして、寝る前に本を読んであげていたので、本の朗読は好きでした。このお仕事をするキッカケと言ってもいいぐらいの事だったので、そういう気持ちでやらせていただきました。毎日誰かに読んであげているんだと考えながら演じたので、楽しかったです」と朗読に対する自身の思いを語った。


「とある魔術の禁書目録」の御坂妹役や「らき☆すた」のパティことパトリシア=マーティン役などを演じたことで知られる、ささきのぞみさん
