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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第6回

巻き返しなるか、Nokiaのプラットフォーム戦略

2010年07月14日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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Androidを採用せず、SymbianとMeeGoに注力

 そのMeeGoプロジェクト発足の発表から4ヵ月、Nokiaの新しいプラットフォーム戦略が固まりつつあるようだ。

 6月末、NokiaのDoug Dawson氏はReutersに対し、同社の主要スマートフォンラインの1つである「Nseries」で今後はMeeGoを採用する計画を明らかにした。Nokiaは4月、最新のフラッグシップ端末「Nokia N8」投入計画を発表しているが、N8はNokia初の「Symbian^3」搭載機となり、最後のSymbianべースのNseries機種になるという。Symbianは引き続き、Nseries以外のローエンド~ミッドレンジ端末で採用していくという。

 7月2日、新設のモバイルソリューション事業部トップに就任したAnssi Vanjoki氏はNokiaの公式ブログでこの情報を補足した。プラットフォームはSymbianとMeeGoの2本柱で展開するとし、うわさされていたAndroidの採用を否定した。N8はSymbian^3ベースとしては、最初で最後のNseries端末となるが、次期「Symbian^4」ベースのNseriesの可能性も“非常に高い”としている。具体的な製品計画としては、N8を数ヵ月後に投入し、年内に初のMeeGo搭載機も提供するという。

オープンソース化されたSymbian^3を採用するスマートフォン「Nokia N8」。フルタッチ操作や1200万画素カメラなどを採用する

 Vanjoki氏は2つのプラットフォームの位置づけについて、Symbianは「Nokiaのスマートフォンプラットフォーム」であり、MeeGoは「スマートフォンを超えた新しい端末の可能性をもたらす技術」と記している。iPhoneやAndroidと対抗するのはSymbianであり、コンピューター分野を狙うのがMeeGoとする。開発サイドでは「Qt」でSymbianとMeeGoに対応することで、開発したアプリを両方のアプリケーションマーケットで公開できる。Nokiaは6月23日、「Nokia Qt SDK 1.0」を公開している。

 Nokiaの不振にはさまざまな要因があるはずだが、その1つがSymbianといわれている。Symbianの起源は、1990年代にPDA用に開発された「EPOC」。最初からタッチ画面端末を想定して開発されたiPhoneやAndroidと比べると古く、Symbian向け開発は難しいといわれている。

 MeeGoの採用は、Nokiaがこれまでのプラットフォーム戦略では戦えないことをやっと認めたものといえ(今度こそ)本気になったことを思わせる。一方でSymbianへの強い執着も見られる。Symbianのファンサイト「Symbian-Guru」のメインブロガー、Ricky Cadden氏はSymbianとNokiaに決別宣言(Androidに乗り換え)とともにサイトの閉鎖を明らかにしたが、Vanjoki氏は、「Ricky(Cadden氏)を含む(Symbian)支持者を取り戻す」と誓っている。Symbianでは、親しみがある、豊富な機能、性能をキーワードにマスのスマートフォンユーザーに訴求していく、とするが、気になるのは「iPhoneとAndroidに対抗するのはSymbian」という位置づけだ。MeeGo搭載機が出てみないことにはわからないが、大きな変化は望めないようにも見える。

熱心なユーザーが多数いたNokia+Symbianのコミュニティにも変化が生じている

 Vanjoki氏のブログ記事のタイトルは“反撃が始まった”だ。「ハイエンドでナンバー1の座を取り戻す」と意気込むVanjoki氏だが、このプラットフォーム戦略が吉と出るか凶と出るか。Nokiaは6月、今後の見通し予想を下方修正している。

筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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