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CAEリファレンスアーキテクチャーに基づく新サーバー

HP、HPC向けの新世代SMPサーバーを発表

2010年07月09日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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HPは7月8日、x86サーバ「HP ProLiantサーバー」の新世代機「Generation 7(G7)」のラインナップを拡大し、4ソケット/8ソケットの“SMPサーバ”を発表した。HPC(High Performance Computing)やCAE(Computer Aided Engineering)といった科学技術計算用途での「計算ノード」としての利用を想定する。

新世代サーバーとSSDカードの概要

 今回発表されたのは、サーバー3モデルとカードタイプの高速半導体ストレージ1種。「HP ProLiant DL580 G7」は、インテルXeonプロセッサー7500番台搭載の4ソケットモデルで、価格は121万650円から。「同DL585 G7」は、AMD Opteron 6100シリーズ搭載の4ソケットモデルで、価格は110万3550円から。「同DL980 G7」は、インテルXeonプロセッサー7500番台搭載の8ソケットモデルで、価格は250万円から。出荷開始は、DL580 G7/DL585 G7が8月下旬、DL980 G7が9月下旬の予定。

発表された新世代サーバー3モデル

 「HP PCIe IOアクセラレータ」は、PCI Expressバスに接続する拡張カード型のSSDストレージで、SATA/SASといったストレージインターフェイスを介さずに高速なデータI/Oを実現する。NAND型フラッシュメモリを採用し、容量は高速タイプのSLC(Single Level Cell)が160GB/320GB、大容量・低コストタイプのMLC(Multi Level Cell)が320GB/640GBの4種がラインナップされる。価格は83万2650円からで、出荷開始は8月下旬の予定。

CAEリファレンスアーキテクチャーに基づくサーバー

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 インダストリースタンダードサーバー事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 中井 大士氏

 製品の詳細を説明した日本ヒューレット・パッカードのエンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 インダストリースタンダードサーバー事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部の中井 大士氏は、まずHPの「CAEリファレンスアーキテクチャー」について説明を行なった。

 同氏はまず、現在のCAE環境の課題として、「ユーザー側のワークステーションの肥大化」「不統一で負担の重い解析システム」「肥大化したデータによるネットワーク圧迫」という3つを挙げた。そして、HPが提供する統合化CAE環境である「CAEリファレンスアーキテクチャー」は、「CAEに必要なシステムをトータルに提供する統合化プラットフォーム」であり、「可視化ノード」「計算ノード」「共有ファイルシステム」の3つの要素で構成されることを紹介した。

現在のCAE環境の3つの課題

 可視化ノードは演算結果のビジュアライズなどを提供する層で、HP Blade Workstationが利用される。ユーザーの手元にあるシンクライアント端末などに画面イメージを転送する「HP RGS」の利用が想定されており、リソースリッチなワークステーションをユーザー各自の手元に置く必要がなくなる。

 計算ノードでは、HP Blade Systemに加えて今回発表されたHP ProLiantサーバーが使われる。ここでは高度な科学技術計算や各種の解析ソフトウェア、シミュレーションソフトウェアなどが実行される。従来はベクトル型スーパーコンピュータやRISCプロセッサが使われることが多かったが、こうした「専用システム/特殊システム」ではなく、汎用サーバーであるx86サーバーで実現することで、標準化されたシステムのメリットを享受しつつ、充分な演算能力を確保できる。

CAEリファレンスアーキテクチャーのロードマップ

 共有ファイルシステムには、大容量のデータ保存に対応するHP StorageWorks X9000などが対応する。可視化ノード、計算ノード、共有ファイルシステムが広帯域インターコネクトで相互接続されることで大サイズのデータをネットワーク経由でコピーする無駄を削減でき、高度なシミュレーションを従来以上の回数繰り返し実行できるようになるなど、設計品質の向上に寄与するという。

 今回発表された新世代サーバーは、CAEリファレンスアーキテクチャーの計算ノードとして利用することが想定されるスケールアップ型のx86サーバーとなる。x86サーバーは、従来はスケールアウト型で利用することが想定された比較的小規模な構成が主だったが、新世代のプロセッサのコア数増加や演算性能向上を受け、いよいよ本格的にスケールアップ型のSMPサーバーが実用的になってきたものと見てよいだろう。

 DL580 G7では、DIMMスロットを64本備え、物理メモリ量は最大1TB、プロセッサー当たり最大8コア×4ソケットで、最大で32コア構成が可能。PCI拡張スロットも11本用意するなど、単体での拡張性も大幅に向上している。

 DL585 G7はプロセッサーにAMD Opteron 6100シリーズを採用したため、DIMMスロットは48本で物理メモリ量は最大512GB、プロセッサー当たり最大12コアでシステム全体では最大48コアを集積可能。PCI拡張スロットはDL580 G7と同じ11本となる。

 DL980 G7はXeon 7500番台を採用する8ソケットサーバーで、「HP ProLiant史上最高の性能」と謳われる。8コア×8ソケットでシステム最大で64コアを集積、DIMMスロットは128本で最大物理メモリ量は2TB。PCI-Express Gen2スロット×16本を内蔵する。さらに、DL980 G7には同社のハイエンドサーバなどに採用されてきた独自技術である「PREMAアーキテクチャー」も採用された。PREMAは“Performance(性能)”“Resiliency(回復力)”“Efficiency(効率性)”“Manageability(管理性)”“Availability(可用性)”の頭文字を取ったもので、ハイエンドサーバに求められる機能を独自技術で実装している。

PREMAアーキテクチャー

製造業への貢献を果たすサーバーへ

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 インダストリースタンダードサーバー事業本部 製品マーケティング本部 本部長 橘 一徳氏

 製品投入の背景について説明を行なった日本ヒューレット・パッカードのエンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 インダストリースタンダードサーバー事業本部 製品マーケティング本部 本部長の橘 一徳氏は、経済状況の影響もあり、「日本の産業の中核である製造業のITシステム投資は“削減”がテーマになっていた」とし、そうした要望に対してHPは「仮想化」「電力制御」「価格改定」という形でコスト削減を支援してきたという。

 しかし、x86サーバーの出荷台数が上昇に転じていることから、同氏は「製品開発のためのIT投資が復活してきている」とし、「HPは裏方から一歩踏み出して、ユーザー企業をリードしていくくらいの気構えをもって“最先端技術で日本の製造業を活性化”したい」と語った。

 HPのHPC/CAE分野への取り組みの中核と位置づけられるのが前述のCAEリファレンスアーキテクチャーだ。現在は「プロセスの統合化」を実現する“1.0”の段階だが、次に「アクセラレーターコンピューティング」としてIOアクセラレータやGPGPUを活用する“2.0”、そして「CAEクラウド」の実現を視野に入れた“3.0”へと順次強化していくというロードマップも示された。

PREMAアーキテクチャーのロードマップ

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