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牛肉を売るなら春菊を出せ――ある家電メーカーの挑戦

2010年07月12日 10時00分更新

小池 勉/コンテンツブレイン

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プレサイトを使って興味を喚起するCRM戦略に発展

 A社への提案は何度かの企画会議を経て、次の新製品発表のタイミングで「プレサイトを活用したCRM戦略」を実施するという提案に発展しました。プレサイトとは、一般公開する以前に、事前予告を兼ねて情報をチラ見せするサイトです。

 まず製品発表の前にプレサイトを作ります。プレサイトは未登録者にはアクセスできない会員限定のサイトですが、ユーザー登録データを元に旧製品ユーザーに手紙で告知しました(もちろん個人情報保護のルールにしたがって)。登録してくれたユーザーにはプレサイトで新製品に関する情報を少しずつ提供し、興味を喚起していきます。旧製品ユーザーから口コミでプレサイトの存在を知った人も登録さえすれば見られるようにしておき、興味の高い人たちも取り込むことにしました。

 プレサイトの情報は一般のネットでは入手できないものばかりなので、登録してくれた人にとっても特別な「プレミアム感」が得られます。メーカーにとっては、ユーザーとの絆を取り戻せます。製品を購入してくれたユーザーは、時間が経つにつれ自分が所有する製品に対する関心が薄れていくものです。このプレサイトは失われた絆を再生する役割も果たせます。

 このとき扱った新製品は海外で先に販売されたものだったので、プレサイトでは最初に海外情報やマスコミの評価を掲載しました。また、国内発売の前に、旧製品ユーザーを招待して新製品を実際に試用してもらうイベントを実施、ユーザーの感想をプレサイトに掲載しました。試用イベントは、プレサイトを見ている同じ立場の人には高い関心を与えたようです。

 新製品発表の段階では、プレサイトでの興味喚起によって、ユーザーの意識の方向性はだいたい決まってきます。発売日には、購入意思を持って店頭に向かった人もいました。本来のプロモーション段階でも、プレサイトで収拾した、顧客の興味を意識したコンテンツを用意して効果的な展開ができました。

 私のプランニングの中でも「プレサイトを活用したCRM戦略」は初めての企画でしたし、A社にとっても実験的な施策でしたが、結果として旧製品ユーザーから見込んでいた以上のアクセス数があり、サイト経由のお客様から早期の売上も確認できました。

 また副産物として、プレサイトに登録した人たちが早期に仕入れた情報を自分たちのブログなどで発信してくれ、口コミ効果を形成することにもなりました。プレサイトは会員限定のクローズなサイトではありましたが、「内容を漏らしてはいけない」と規制しなかったので、アクセスしたユーザーが自分のブログなどで興味を持った点を広めてくれたのです。

 この企画は、海外で先行発表するなど特殊な点がありますが、製品やブランド愛好者の興味を高めるには効果的な手法です。

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