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牛肉を売るなら春菊を出せ――ある家電メーカーの挑戦 (5/5)

2010年07月12日 10時00分更新

文●小池 勉/コンテンツブレイン

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あなたのサイトにネットの春菊はありますか?

 今回のA社の例でいえば、現ユーザーに旧製品と比較して新製品の魅力を表現した「プレサイト」のコンテンツが「リアクション喚起」にあたります。つまり、ユーザーの興味を掘り起こすきっかけです。その受け皿として、発表後の製品プロモーションのサイトには、ライフスタイル提案や、製品選択、購入検討に必要な現ユーザーが実感できるサイトストーリーを設計しました。

 私はこの手の提案をするときに、よくスーパーマーケットを例に使っています。ほとんどの食材が四季を通して売られている現在、スーパーでは季節感を演出するのに野菜を使います。スーパーの店の入り口に野菜売り場があるのは季節感を演出するためです。

 そこで「春菊」が目立つ場所で安く売られていれば、毎日献立を考えている主婦なら反射的に「今日はスキヤキにしようかな?」というリアクションが起こります。そのとき頭の中に「スキヤキ」というキーワードが生まれるのです。その後、店内を回るときには「スキヤキ」という視点で商品を見ますから、豚肉より牛肉に意識が向かいます。野菜売り場以外の品揃えがいつもと同じであっても、その人の目には違うものとして映っていることでしょう。VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)的に言えば「牛肉を売りたいなら、春菊を前に出せ」と言ったところでしょうか。

 この場合の春菊が「リアクション喚起」であって、「その後の店内の品揃え」がサイトストーリーになります。サイトストーリーというと難しく聞こえるかもしれませんが、「アクセスした人の頭の流れを想像してみてください」ということだけなのです。Webサイトはページごとに分断されているからこそ、「アクセスしている人の頭の中で、各ページ、各コンテンツが有機的に連動するようなしくみ」であるサイトストーリーが大切なのです。1サイトのサイトストーリーはひとつとは限りません。喚起したリアクションの数だけサイトストーリーは考えられます。

 アクセスしたユーザーにとって「何が興味の出発点になるのか」「興味を持った人が、どういう目でサイトを回るのか」を想像することから、リアクション喚起、サイトストーリーが生まれます。ですからこの2つはセットで考えないと効果はありません。そのためにはまず「興味の出発点は何か」を見つけることです。みなさんの会社のWebサイトにとって「ネットの春菊」に相当するものは何でしょうか? ぜひ探してみてください。

『モノ・ヒト・コトでコンテンツを考えると、「サイトストーリー」が見えてくる』

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著者:小池 勉(こいけ・つとむ)

株式会社コンテンツブレイン 代表取締役社長、株式会社サステナブル 代表取締役。Webマーケティングプランナー。家電、自動車からアパレル、食品、ブライダル、クレジットカード、PCメーカー、部品メーカーまでさまざまなジャンルのサイトプランニングを数多く手掛ける。またWebにおけるCRM戦略の立案、アイトラッキングを活用したWebコミュニケーション効率化なども行なっている。


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