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牛肉を売るなら春菊を出せ――ある家電メーカーの挑戦 (2/5)

2010年07月12日 10時00分更新

文●小池 勉/コンテンツブレイン

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「ユーザーの気づき」を呼び起こす仕掛けがなかった

 まず私は問題をWebに限定しないで考えることにしました。A社の製品は、一般の方が日常的に使う電化製品です。しかし現在の電化製品はどれも性能、機能が優れていて、普通に使っていて不満を覚えることはまずありません。20年前、30年前でしたら生活者の望む性能、機能を満たしていなかったでしょうが、研究開発が進んだ結果、ある時点で生活者が不満を持つレベルをクリアしてしまい、現在となってはどれを買っても「買って後悔した」と思うようなことはまずなくなりました。今は、一部の機能の違いや価格などで選ばれる時代です。


 では、このような時代にあって、メーカーの企業サイトでは何をすればいいのでしょうか? 同様の悩みは家電製品に限らず、自動車、オーディオ、パソコンなどいろいろなジャンルの進化し続ける製品に共通していています。特に日進月歩で進化を続ける家電や自動車製品は、ある時点で生活者の望む性能を超えてしまうものなのです。

 私がサイトマスターの方に提案したのは「新機能が利便性を向上させることを実感できる仕掛けを作る」ことでした。「この機能を使えば、今までできなかったことができるようになる」「この機能を使えば、自分のライフスタイルがこう変わる」とユーザーに気づかせる仕掛けが足りないと思ったのです。上のグラフで解説すると、「生活者の望むレベル」を「製品の性能レベル」に近づけたいと考え、そのためのコンテンツを用意したいと提案しました。


 それからA社のサイトマスターと話し合った結果、「アクセスしたユーザーにサイトの利用価値が伝わっていなかったのではないか」という点で共通認識が生まれてきました。単に「こういう新機能を搭載しました」「新機能でこんなに便利になります」とスペックを訴求するだけではなく、「こんな便利なことができたらいいと思いませんか」とユーザー視点で訴えることが足りなかったのではないか――。興味を引き出せないままに多くの情報を提供しても、ユーザーの気持ちをつかむことはできません。だからアクセス数が伸びないという結論に至ったのです。

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