日本人はインターフェースで主導権をとれるはず
―― 最近ジャーナリズムの世界では、佐々木俊尚さんが主張する「キュレーション」というものがあります。ニュースを集め、選び、意味を与え、共有する。そういった機能が重視されつつあると感じています。映像メディアにおいても同様でしょうか?
夏野 うーん、でも、別に……。無限の枠があるわけなので。たとえば、テレビの場合は24時間という枠が民放の場合1つしかありません。でも、ネットなら、ニコ動なら公式生放送を複数同時に行なうこともできますよね。だから面白そうだったら何でもいいんじゃないですかね(笑)。面白そうだったら全部やって、その中から気づきを与えられれば。
―― なるほど。これまでの配信サービス、かつてのGyaO!などは振り返ってみると、独自番組を展開する際にはどうしてもテレビと同じような考え方にしばられて取り組んでしまっていたようにも思えます。
夏野 ま、ネットなんで。面白そうだったらとりあえずやってみる。で、ダメだったらスパッとあきらめてすぐやめる。地道に支持が高まっていくものもありますけど。今なら、政治のホットトピックスならニコ動ということになってきているのはその一例ですね。
―― 政治カテゴリではYouTubeも力を入れています。
夏野 うーん。でも、ニコ動のような生番組がないですよね。生放送はインタラクティブだから新しい発見があって面白い。YouTubeは一方通行の政見放送みたいになっててつまんないじゃないですか。政治家の発言そのものが面白くなくても、そこに突っ込みが入ると全然別の面白さが生まれることもある。ユーザー生放送なんかもそうですよね。
―― ネット接続型のテレビにもニコニコ動画は当然進出されるわけですよね?
夏野 進出というか、僕らは特に何もしなくてもいい。HTML5対応のブラウザからアクセスしてもらえればそのままニコニコ動画を楽しんでもらえるようになるんですよ。コンテンツを提供するという観点ではグーグル(YouTube)と同じ立ち位置にいる。何も埋め込んだりする必要がない。これが今度の新しいテレビの凄いところですよね!
―― かつて「4TH MEDIA」(NTTぷららが2008年まで運営していたオンデマンドサービス)では、「リモコンのチャンネルボタンにネットサービスが割り当てられることが重要だ」という志向もありました。ROBROもテレビ画面上でのチャンネルにネットサービスを割り当てることをビジネスの一環としています。そういったチャンネルの概念は今後どうなっていくのでしょう?
夏野 リモコンって、もう数字キーを使うことって少なくなってますよね。ROBROだって画面上にはチャンネルとして表示されていますけど、リモコンの上下キーで選択して視聴してますよ。いったん目当てのチャンネルにたどり着いたら、次からはブックマークを使えばいい。要はユーザー・インターフェースの問題になってくると思いますよ。
少なくともソニーには、インターフェースに対するこだわりはありますよね。久夛ちゃん(久夛良木健 元SCE社長)が考えた「クロスメディアバー」といった思想が勝負になってくると思うんですが。
―― そういったハードウェアに加えて、ネットテレビに最適化されたUI設計でも日本が主導権を握りたいところですね。薄型テレビで韓国勢に追い越されてしまった轍を踏まないためにも。
夏野 そう。だから早くやんないと。また先にやられちゃうよと思っているんです。
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