異なる日本の立ち位置、新興国向けビジネスは
一方で、今回の調査では、日本の企業のCEOだけ傾向が異なるという点が数多く見られたのも特徴だ。
例えば、自社に最も影響を与えると考えられる外部要因としては、日本のCEOは「市場の変化」に続いて、「グローバル化」、「技術革新」の順になっているが、グローバル化がベスト3に入っているのは日本だけだ。
ほかの地域では、すでにグローバル化が常識になっており、日本のグローバル化が遅れているとの見方のほか、日本の経営者がグローバル化に対してセンシティブになっているとの見方もあるが、いずにしろ、これは日本特有の傾向だ。また、「市場の変化」をあげた日本のCEOは78%に達しており、全世界の50%に比較すると極めて高い。これも高い品質を要求をする日本の市場の声に耳を傾けて、製品を開発するという日本の企業ならではの姿勢が浮き彫りになった格好だ。
また、CEOが懸念する課題では、日本では「新興国市場への経済力のシフト」が突出。これに対して、北米では「大きな政府および規制強化」、欧州では「人材不足」、中国では「グローバル思考」があがっている。さらに、日本のCEOは、新興国市場への経済力シフトが自社に影響を与えるとの回答が74%、新たな経済環境は構造的に異なるとする回答が82%となり、北米、欧州、中国がそれぞれ50%前後の回答率となっていることに比べていると突出して高く、日本のCEOの解決すべき課題として新興国向けビジネスが重視されていることがわかる。
「韓国の企業は自国のマーケットが小さいために、新興国などに積極的な展開をしているという発想がある。しかし、日本の企業は、新興国に向けてこれまでとは違う発想を持つことができるのか、あるいは自社が持つコアコンピタンスを生かすことができるのかといった点で懸念を持っている」とした。
品質重視、高付加価値戦略が日本企業の特徴。それがグローバル化において避けては通れない新興国市場ビジネスでは、そのまま通用しないことは感じている。
問題はそれに向けた変革ができるかどうかだろう。複雑性が進展するなかで、日本のCEOは、グローバルで戦うために、世界で最も大きな変革を求められているのかもしれない。
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