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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第57回

ラインナップが広がるAtom CPUのロードマップ

2010年06月28日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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Atomプロセッサーとチップセット、プラットフォームのロードマップ

Atomプロセッサーとチップセット、プラットフォームのロードマップ

 2011年には、Moorestownの後継製品である「Medfield」プラットフォームの登場も予定されている。Medfieldは現在のMoorestownの機能を、ほぼワンチップに集積したSoCになることが予定されている。

 もっとも、本来のインテルのスケジュールでは、2008年がMenlow、2009~2010年がMoorestownで、2011年にMedfield投入だった。ところが実際には、2008~2010年がMenlow、2011年がMoorestownとなっている。これから考えると、Medifled搭載製品が出てくるのは2012年以降ではないか、という気もする。


組み込み向け専用Atom「Tunnel Creek」

 さて、ここまででAtomプラットフォームの変遷をひととおり説明したわけだが、最後に組み込み(Embedded)向けについても紹介しておきたい。そもそもMenlowが登場したときから、そのうちのいくつかの組み合わせを組み込み向けとして供給してきた。

 「インテルの言うEmbedded向けとは何か?」というと、基本的には同じ製品だが、長期間の供給保証やハロゲンフリー対応、産業向けの動作温度保障(0~85度とか、自動車用だと-40~85度なんて場合もある)が行なわれたものである。もっとわかりやすく言えば、インテルの製品情報サイトで、「Embedded」の欄が「Yes」になっているのがEmbedded向け製品、ということになる。

 例えばMenlowの場合、Atom Z510/520/530の3製品のみがEmbedded向けとしても販売されている。これはMenlowだけでなく、ネットブック向けのAtom N270やPine Trailなども、一部製品がEmbedded向けにラインナップされている。今後は恐らくCeder TrailなどもEmbedded向け製品が用意されるとは思うが、これとは別に2010年6月にEmbedded向けとして発表されたのが「Tunnel Creek」である。

Queens Bayプラットフォームの構成

図6 Queens Bayプラットフォームの構成

 Tunnel CreekはAtom CE4100などの特定用途向けを除くと、同社初のEmbedded専用プロセッサーだ。プラットフォームとしては「Queens Bay」と呼ばれる。構成は図6のようになっており、Atomのコアにメモリーコントローラーやグラフィックス/ディスプレー出力、オーディオとPCI Expressコントローラーが搭載されたものだ。

 これ以外のインターフェースについては、別途チップセットを用意する必要があるが、汎用のバス規格であるPCI Expressがそのまま出ているので、インテル以外のベンダーでも独自にチップセットを作ることが可能だし、何ならFPGAの組み込み向けコントローラーを直結することも可能なものである。一応インテルもQueens Bay向けのチップセットを作るようだが、具体的にどんなものになるかは、まだわかっていない。

 最後にロードマップ図の一番上にある項目について説明して終わりにしよう。2009年3月、インテルと台湾TSMCは契約を結び、インテルの顧客がAtomを搭載した独自のSoCを、TSMCで製造できるようになった。つまりインテルはTSMCに対し、AtomをIPコアの形で提供したわけだ。

 もっとも、1年後の2010年3月には「ほとんどニーズがなかった」ということで、契約はいったん休止状態になった。だが少なくともインテルはまだ諦めたわけではなさそうで、今後の展開次第ではまたサービスを再開したいと思っているようだ。

今回のまとめ

・Atomプロセッサーの種類は着実に増加しているが、コアアーキテクチャー自体は2008年4月に登場した「Silverthorne」から変わっていない。

・当初はUMPC向けのSilverthorneと、安価なネットブック/ネットトップ向けの「Diamondville」の2ラインナップが用意された。現在ではそれぞれ「Moorestown」と「Pine Trail」に移行しているが、Moorestown搭載製品は遅れている。

・2011年には、Moorestownを1チップSoC化した「Medfield」の登場が予定されている。また、インテル初の組み込み専用Atom「Tunnel Creek」も発表済みである。

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